ロマンス小説感想日記

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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

冤罪法廷 ジョン・グリシャム

 昔好きでよく読んでいたJ・グリシャム。この作家は90年代には書く作品が次から次へと映画化されていて、しかも人気俳優主演で一流の監督を使った大作ばかりで、どれも面白かった。映画が気に入って小説も読むようになったのよね。最近はあまり映画化はされていないみたいだけど、今でもアメリカの法廷サスペンスの作家では一番人気で、新作を出す度にベストセラーになっている。(初期の作品のほうが面白かったと言われてはいるけど。)長いこと読んでいなかったけど久しぶりに読んでみた。

 昔読んだ作品の内容はもうほとんど忘れてしまったので自分では比べようがないんだけど、これは最近の作品の中では割と評判が良く、初期の面白さを彷彿とさせるとのこと。実在の人物に基づいたストーリーだそうで、冤罪で服役している人を釈放させるために働く弁護士が主人公。なかなか読み応えがあり面白かった。

 主人公のカレン・ポスト(←男性です)は、公選弁護人として働いていたけれど、凶悪なギャングのメンバー等の弁護ばかりさせられているうちに心が折れて精神を病んでしまい、奥さんとも離婚して、弁護士稼業から足を洗って神学校に通い聖職者になった。しかし刑務所で服役囚のための牧師として仕事をした時に、冤罪を訴える囚人から話を聞き、彼らを救うことこそ自分の使命だと思い、弁護士に復帰する。聖職者で弁護士という異色の経歴で、その波乱万丈な人生がかなり興味深い。薄給で貧乏暮らしをしながら、冤罪で刑務所に入れられている人のために身を粉にして働くなんて、並の人には真似出来ないと思うわ。素晴らしい自己犠牲の精神だけど、凄い人すぎてちょっと共感はし難いかもしれない。そこまで他人に尽くせるのは聖職者だからこそだと思う。

 それにしても検察に都合の良い証言をして報酬を得ているエセ化学者の証人とか、麻薬組織と癒着している警察署長とか、とんでもない奴らのせいで有罪にされてしまった被告が気の毒すぎる。小説なので多少話を盛っているにしても、実際これに近いことが起きていると思うと恐ろしいな。そして一度有罪判決を下されたら、それを覆すことはかなり困難で、ものすごく大変な仕事だということがわかった。アメリカの司法制度の問題を考えさせられる硬派な内容ながら、エンタメ性の高いストーリーで読者を退屈させないのは流石。被告に罪をかぶせた人物を探していくうちに、恐ろしい事実が明らかになっていき、ハラハラさせられ面白かった。

冤罪法廷(上) (新潮文庫)

冤罪法廷(上) (新潮文庫)

  • J・グリシャム
  • 新潮社
冤罪法廷(下) (新潮文庫)

冤罪法廷(下) (新潮文庫)

  • J・グリシャム
  • 新潮社

 

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