ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

ノー・セカンド・チャンス ハーラン・コーベン

 主人公が医者で、奥さんを殺され、犯人だと疑われ、逃亡しながら事件の真相を探るという設定は、先日読んだ「唇を閉ざせ」と似ているけど、本作はそれに加えて生後半年の娘が誘拐され、FBIを辞めたばかりの昔の恋人に助けを求め一緒に犯人を捜すので、また違う面白さがあった。こちらのほうが悪役を含め色んな登場人物のエピソードがあり、群像劇っぽい感じがするかな。

 本作の主人公のマークは、娘のことは心から大切に思っているけど、奥さんのことはそれほど愛しているわけではなく、大学時代の恋人のレイチェルのことをずっと忘れられずにいる。彼女との馴れ初めや、仲違いして別れることになってしまったエピソードは青春ドラマっぽいかも。H・コーベンの主人公は男性でも割と感傷的でよく泣くのよね。あんまり強くないし、利己的なところもあって完璧な人間ではないけど、人間味がありリアルな感情が描かれているところが良いと思う。悪役の殺し屋の女性も、人気ドラマの子役で人気を博した後の転落人生が興味深かったし、コソボからやって来た女性とか、壮絶な人生を送っている人たちのエピソードが盛沢山で、やや話がとっちらかってる気はするけど面白かった。

 意外な人物が殺しに関わっていたのがわかったり、事件の真相には驚かされた。勧善懲悪でスッキリという結末ではないけれど、(この作者はそういうパターンが多いわね・・)「動機が立派でも間違ったことをしてはいけない」という言葉には重みがあったし、色々と考えさせられるストーリーが良かった。

↑これもフランスでドラマ化されてます。H・コーベンはフランスでも人気なのね。

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