- ピーター・スワンソン
- 東京創元社
面白かった~。やはりP・スワンソンは期待を裏切らない。この作家は不気味なサイコ・サスペンスが本当に上手いわね。以下あまりネタバレしないように書いてはいますが、これから読もうという方はレビューの類はなるべく避けたほうが良いかと。
ヘンリエッタ(愛称ヘン)は暗くてゾッとするような作品が人気の版画家で、抗鬱剤で症状を抑えているけど双極性障害を患っている。夫のロイドとボストンに新居を購入し引っ越して来て隣に住む同年代の夫婦マシューとマイラと知り合いになったけど、どうやらマシューは殺人鬼らしいと気付き・・・というストーリー。
双極性障害(!)のヘンが取り憑かれたようにマシューの身辺を調べるのが面白すぎる。マシューはサイコ・キラーとは言え、女性を虐げるゲス男を抹殺する処刑人という感じで一応筋は通っていて憎めない。「男はみんなキツネ顔かブタ顔のどちらかだ」という妙な持論があったり笑えるわ~。私立校の歴史教師で同僚にも親切な良い人なんだけど、不幸な生い立ちで内に恐ろしいものを抱えている複雑で興味深いキャラクターだった。彼が殺人鬼だということは最初からわかっているので、何かあるはず・・と思って読んでいると、すごい仕掛けが待っていて流石。(でもこのサプライズは注意深く読んでいれば気付く人もいるかも。ちょっとしたヒントが散りばめられているし。私は半分くらい読んだところで、これはもしや・・と勘付いたけど、それでも十分楽しめた。)
"ミランダを殺す"の男版みたいなストーリーで、ドラマのデクスター(←殺人鬼)と HOMELANDのクレア・デーンズ(←双極性障害の役)みたいな強烈なキャラクター同士の対決にドキドキさせられた。(そう言えばドラマで双極性障害の治療に電気ショック療法をしている場面を見た時にはそんな恐ろしい治療を本当にするんだろうかと思ったけど、作中、ヘンが電気ショック療法を受けたという記述があって、そういうものなんだと納得した。)P・スワンソンは既刊も全て読んでいてどれも面白かったけど、中でもこれは"ミランダ~"と並ぶ傑作じゃないかしら。