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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

天使は振り返る グレッグ・アイルズ

Turning Angel: A Novel

Turning Angel: A Novel

  • Iles, Greg
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 以前読んだこの作者の「血の記憶」よりも面白かった。これはPenn Cageシリーズの2作目だけど、これ以降翻訳が途絶えているのよね。原書は現在6作目まで出ていて評判も良く面白そうだけど、元々長めの小説を書く作家なのに、シリーズが進むにつれてどんどん頁数が増えてさらに長くなっているみたいで、あまり分厚いと翻訳を出す出版社に敬遠されるよね・・。

 主人公のペンは奥さんを癌で亡くして9歳の娘と暮らしている43歳のシングルファーザーで、以前はヒューストンで検事として活躍していたけれど、今は故郷のミシシッピ州に戻って作家をしている。地元の女子高生が死体で発見される事件が起き、その殺害容疑をかけられたのがペンの親友で、優秀な医師のドルーだった。彼はその女子高生と恋人関係にあったけれど殺してはいないと言う。ペンは親友のために事件を調べ始める。殺害された女子高生のケイトはハーバード大学に進学予定の才女で、成績優秀、スポーツ万能な上に学校一の美人だったけれど、性に奔放で何やら秘密があったらしい・・というストーリー。

 40代の医師が女子高生に淫行とか、またエグい話だわね。ケイトの性的に倒錯した一面が暴かれて、かなり際どい内容だった。麻薬抗争で残酷に人がバタバタと殺されたり、なかなか衝撃的なストーリーで、ペンが麻薬の売人に拉致されて、逃げないようにヘロイン漬けにされる場面は凄まじく恐ろしかった。ショッキングな内容がこれでもかというくらい詰め込まれていて、怒涛の展開で長さも気にならずとても面白かった。

 

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 ドルーは奥さんとの仲が冷え切っていて、美しい女子高生に本気で恋したという純愛路線になっているけど、だからと言って同情する気にはなれないなあ。オジサン作家が書いていて、読者もたぶんオジサンが多いだろうから、やはり男性寄りというか男性目線なところはあると思う。ペンが娘のベビーシッターを頼んでいるミアが殺されたケイトの同級生で、彼女に協力してもらって捜査をするのだけど、一緒に行動しているうちにミアがペンに言い寄る展開になるのよね。オジサンが若い女の子にモテすぎ~。まあペンは誘惑に屈せずこらえてカッコいいことを言うのだけど、犯罪スレスレでギリギリセーフというところね。作者的には、誘惑に屈してしまったドルーと、踏み留まった高潔なペンという二人の対比を描いているんだろうけど、女性目線で言わせてもらうと、ペンとミアの会話が時々猥談入っててちょっと引いたし、高校生の女の子に対して不適切と思われる言動もあって、あまりペンを褒められないわ。

 

 ついでに翻訳で気になったことを書いておこう。全体的に読みやすい文章であまり文句はないけど、「コンフォーター」ってカタカナ語で書くのではなく普通に「布団」って訳したほうが良くないかな?私は以前アメリカに住んでいた時にお店で寝具を買ったこともあるからわかるけど、コンフォーターってカタカナで書かれても何それ?って思う日本人のほうが多いと思う。

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