ウィル・トレントのシリーズで検死官のサラのキャラクターが気に入ったので、彼女が主役のグラント郡シリーズも読んでみることに。この作者の2001年のデビュー作なので、最近の作品と比べると多少粗さはあるけど面白かった。私が読んだのは早川書房が昔出した古い文庫本のほうで、これが刊行されたのはP・コーンウェルの検屍官シリーズが人気だった頃だから、当時は二番煎じと思われてあまり売れなかったのかもね。早川は1作目だけ出して後は放置というパターンが多いけど、もし続きも刊行していたら人気シリーズになっていたかもしれないのにもったいない。まあ今ではK・スローターはハーパーBOOKSの看板作家になっていて、このシリーズも翻訳されているので結果オーライだけど。
被害者を残忍にレイプして殺す連続殺人犯が現れ、グラント郡警察の面々が必死になって犯人を突き止めようと捜査するストーリー。この作家はデビュー作からずっとこういう作風なのね。これも事件の猟奇性には度肝を抜かれるけど、犯人は割とすぐに察しがつくし、プロット自体はそこまで捻ったものではないと思う。でもそれを補って余りあるほどキャラクターが魅力的で、主人公のサラ、彼女の元夫で警察署長のジェフリー、癇癪持ちの刑事リナが織りなす人間ドラマが本当に面白い。お互いに愛し合いながらもすれ違って離婚してしまったサラとジェフリーの関係が気になって夢中でページをめくってしまった。12年前にレイプの被害に遭った辛い過去のあるサラには是非ともジェフリーと幸せになってもらいたいけど、今後さらに辛い出来事が待っているのよね。でも主人公がずっと夫とラブラブだったら面白くないし、そんな苦難の人生を精一杯生きているからこそサラを応援せずにいられないわけで、作者はこれからもサラに試練を課し続けるのよね。