ロマンス小説感想日記

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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

警官の街 カリン・スローター

警官の街 (マグノリアブックス)

警官の街 (マグノリアブックス)

  • カリン・スローター
  • オークラ出版
Cop Town: A Novel

Cop Town: A Novel

  • Slaughter, Karin
  • Delacorte Press

 

 2015年のスティール・ダガー賞受賞作。1970年代のアトランタが舞台の警察もので、これまでの作品よりもハードボイルドな雰囲気。女性が軽視され、白人と黒人が対立し、同性愛者が嫌悪されていた時代に、男性優位の警察組織で婦人警官として働く女性たちの物語。主人公のマギーもケイトも魅力的なキャラクターだとは思うけど、内面の描写が少な目で共感し難く感じた。

 新人警官のケイトはユダヤ系の裕福な家庭の出身で、夫をベトナム戦争で亡くし、独り立ちするために警察官になった。お嬢様育ちの彼女がタフな職場で頑張るところは好感が持てた。叔父も兄も警官という警察一家出身のマギーは、優秀な警官なのに女性だから軽んじられていたけれど、兄が巻き込まれた事件で叔父に歯向かい、正義のために行動するのが良かった。

 当時の警察内の差別や偏見を描いた力作だけど、登場人物が多めで、時代背景も詳細に描写され、色々なテーマが盛り込まれているぶん、話に入り込むのに時間がかかり、どんどんページをめくってしまうような感じではなかった。全体的に硬派なストーリーなのに、ケイトと医師のフィリップの情事とか、メロドラマっぽいエピソードが入っていて違和感があったけど、ユダヤ系の貞淑な未亡人が性的に開放されたということなのかな。頑張る女性の話なら、もう少し爽快感のあるストーリーだと良かったけど、終盤の犯人との対決は盛り上がって面白かった。