アリス・フィーニーの最新作。前作は夫婦関係がテーマのミステリーだったけど、今作は母と娘の関係がテーマ。腹に一物ある登場人物ばかりで誰もが秘密を抱えていて、謎に引き込まれてどんどんページをめくってしまうのはこれまでどおりだけど、いつものようなイヤミスではなく希望の感じられる結末で読後感も良かった。
高齢者施設の所長が殺される事件の話なので、この作家も最近流行りの老人ミステリーを書いたのか?と思ったけどそうではなく、80代、50代、30代、10代の4人の女性が関わるストーリーで、この作者らしい叙述トリックを駆使したミステリーだった。面白いことは間違いないけど、どんでん返しというより、徐々に真相が見えてきて最後になるほどと腑に落ちるようなストーリーだったので、宣伝文句でやたらとどんでん返しを強調しないほうが良かったのではないかしら。
殺人事件は起きるけれど、犯人捜しよりも、登場人物の秘密を探るのがメインのストーリーで、母と娘の複雑な関係をうまくミステリーに仕立てていて面白かった。私は「木曜殺人クラブ」みたいな老人ミステリーよりも、この手の女性が主人公のサスペンスのほうが好きだけど、最近は翻訳が少なくなっているのが残念。このタイプのミステリーを書いている最近のイギリスの女性作家(ポーラ・ホーキンズ、ルーシー・フォーリー、ルース・ウェア、リサ・ジュエル、B・A・パリス、等々)の中ではアリス・フィーニーが一番技巧を凝らした作風でミステリーとしての面白味は一番だと思う。