この原書が少し前にNY timesのベストセラーリストに入っているのを見て気になっていたのよね。殺人の方法を教えている秘密の学校の話とのことで面白そうなので読んでみた。
部下を虐げ脅迫するサイコパスのような上司の元で働いている主人公は、こんな卑劣極まる人間はもう殺すしかないと、殺人を計画し実行したものの、うまくいかなかった。警官がやってきて逮捕されるかと思いきや、どういうわけか殺人の方法を伝授する学校に連れて行かれ・・というストーリー。アイディアは独創的で、主人公が上司の殺害に失敗して捕まる序盤は、一体どうなるのだろうとわくわくして読んでいたけれど、その後の展開は期待外れだった。
学校で余程凄いことを教わるのかと思いきや、校内の様子なんかを描写するのに多くの頁が割かれていて、授業はそこまで興味深い内容でもなく、正直言って少々退屈だった。本文が学校の教本の体で書かれていて、主人公の日記の引用でストーリーが語られているのだけど、こういう内容なら主人公がもっとはっちゃけていたほうが面白いのに、やけに淡々としていて盛り上がりに欠ける気がした。着想はユニークだけど残念ながらアイディア倒れの小説という印象。中盤の学校生活の部分はあまり面白くなくて流し読みになってしまったけれど、終盤、学んだことを実践に移して殺人を実行するところではちょっと盛り返したかな。
この小説は時代設定が1950年代になっているけど、あまりその時代の雰囲気が感じられず、最初のうちは現代の話だと思って読んでいたのよね。時代考証が適当な気がしたなあ。全体的に起伏が乏しく、展開がスローで緊張感に欠け、自分の好みではなかったけど、アイディア自体は悪くないと思うので、このブラックなユーモアに面白味を見い出せる人なら楽しめるんじゃないかな。(ちなみに私は図書館で借りて読みました。ポケミスもどんどん定価が上がっていて、これは三千円超え。気軽に買える値段ではないよねぇ。)