Will Trent 10作目。サラの亡くなった夫ジェフリーが過去に担当した事件と同じ手口の殺人事件が起きGBIが捜査するという、過去と現在がクロスオーバーする最高に面白い展開。文句があるとすれば、翻訳を出している出版社に対してで、これの前に未訳のグラント郡シリーズを先に出してほしかった。ウィル・トレントのシリーズはサラが登場するようになってからは過去の事柄に対する言及が頻繁にあるし、本作はサラのジェフリーに対する感情の変化も読みどころの一つなのに、ジェフリーが殺された事件を書いた巻が未訳では駄目でしょう。
過去のジェフリーが、残虐な連続殺人鬼の犯行を止めたいあまりに焦って状況証拠だけで逮捕に至ってしまった顛末が詳細に描かれていて、誤認逮捕ってこういう風に起きるんだなと非常に興味深かった。レナ・アダムス刑事がまたやらかして、とんでもない大失態を演じていたわね。自分の杜撰な対応のせいで人が死んだら、普通の神経の持ち主なら良心の呵責に苦しみそうなものだけど、大して気にしていないようで、こんな人間が警官をやっていて良いのだろうかと思わずにいられない。まあストーリーを盛り上げるためには、これくらい腹の立つキャラクターがいたほうが良いのかもしれないけど。700頁超えの長編なのに中弛みすることもなく、先が気になってどんどんページをめくってしまった。
あと書きで作者がサラの年齢に関して、40手前というのは計算に合わないけどフィクションだから許してねというようなことを書いていたけど、長く続くシリーズものではヒロインがおばあさんになってしまうと困るので、ある時点で年を取らなくなったりするのはよくあることよね。P・コーンウェルの検屍官シリーズでもスカーペッタが途中で若返ったりしてたし。
ウィル・トレントのドラマ版はシーズン3の製作が決定したとのこと。アメリカの地上波で放映しているドラマだけど日本ではDisney+で配信中。
Disney+では J・ディーヴァーの小説(→感想) が原作の「トラッカー」も配信開始したけど、こちらも最近シーズン2の製作が決定。日本でも人気のYAミステリー小説(→感想) 「自由研究には向かない殺人」はイギリスBBCがドラマ化して、日本ではNetflixが8月に配信予定。