純文学的なミステリー。二見文庫さんはジャンルをロマンスからミステリーに転向したけどうまくいかなかったのか、もう翻訳小説は出すのをやめてしまったわね。これは超ベストセラーの「ザリガニの鳴くところ」と似たようなのを出してヒットを狙ったのかもしれないれど残念ながらいまひとつかな。作者もおすすめとして挙げている「父を撃った12の銃弾」と似たところがあり、二番煎じという印象が拭えなかったし、海外ミステリーとしてはページ数が少なめで短くまとまっているにもかかわらず展開がスローに感じた。
主人公のクーパーは元軍人で8歳の娘フィンチと山奥の家で世間から隠れるようにして暮らしている。戦争のPTSDを患っているせいで何やら罪を犯して逃げる羽目になったらしい。クーパーが一体どんなことをしたのかを謎のまま引っ張っていたけれど、真相が明かされたところで別に想定内の内容で驚きはなかったので、どんでん返しを楽しむミステリーというわけでもないし、サスペンスにしては緊張感のある展開も少なく、エンタメ的な面白さに欠けるので、読む人を選ぶ作品だと思う。良い話ではあるけれど、クーパーのPTSDについてあまり説明されていないので共感しづらいし、フィンチは8歳にしては賢くて聞き分けも良く、良い子すぎて現実味に欠けるような気がした。ロマンスらしきものも若干あったけれど、唐突すぎて違和感があったな。純文学っぽいのが好きな人には良いと思う。
この系統ならやはり「ザリガニ~」と、クリス・ウィタカーの「われら闇より天を見る」が面白かったな。