ロマンス小説感想日記

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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

無罪 スコット・トゥロー

無罪 INNOCENT

無罪 INNOCENT

  • スコット トゥロー
  • 文藝春秋
Innocent (Presumed Innocent Book 2) (English Edition)

Innocent (Presumed Innocent Book 2)

  • Turow, Scott
  • Grand Central Publishing

 

 Apple TV+ のドラマ「推定無罪」を毎週楽しみに見ていたのだけれど終わってしまった。ハリソン・フォード主演の映画版は昔見たけど細かいことは忘れているし、ドラマは結末を変えているので最後まで真犯人が誰かわからずハラハラさせられた。ジェイク・ギレンホール主演で製作がデヴィッド・E・ケリーなら間違いなく面白いわよね。D・E・ケリーの法廷ドラマは昔「アリーmy ラブ」とか「ザ・プラクティス」が好きでよく見ていたけど、最近も「リンカーン弁護士」をはじめ色んなドラマを手掛けていて、まだまだ活躍しているのね。「推定無罪」はシーズン2も製作決定らしいので楽しみだな。

 法廷ものの小説は昔ジョン・グリシャムを結構読んでいたけど、スコット・トゥローは読んだことがなくて、ドラマが面白かったので、その続編にあたる小説を読んでみようと思い立った。これは「推定無罪」の20年後の話で、60歳のラスティは判事になっていて、妻を殺害した容疑で起訴されるという。担当の検事はまたもやトミー・モルト。最初は自然死と思われていたけど、ラスティの不倫が発覚して殺人ではないかと疑われることに。以下多少ネタバレあり。

 ラスティの奥さんのバーバラはうつ病を患っていて精神が不安定だそうで、妻とギクシャクしているために部下の30代の美女との浮気に走ってしまったらしい。60歳になって30代女性と不倫というのはちょっとキモいけど、女性のほうも彼に夢中になっているので60でも余程のイケオジなんでしょうね。前半は2人が密会を始めたきっかけから、ホテルでの情事、ラスティがバイ〇グラを飲んだとか、彼女がかなり経験豊富なことがわかり心配になり性感染症の検査を受けに行ったとか、浮気の話ばかりで、法廷ものというより不倫小説みたいだったけど、その不倫のドロドロ具合が凄すぎて、それはそれで別の面白さがあった。ラスティがやっぱり奥さんとは別れられないと泣く泣く彼女との関係を断つと、何と傷心の彼女に不倫のことは何も知らない彼の息子のナットが言い寄り始め、最初はさすがに父の次に息子に行くのはマズいとためらっていた彼女も、若いイケメンによろめいて付き合うことに。するとバーバラから息子の交際相手に是非会いたいから我が家に食事に来てくれと言われ、断れずに仕方なく招待を受けると、実はバーバラは不倫のことを知っているとわかり、家族を巻き込んで酷くこじれた四角関係になっていて、痴情のもつれで殺人の一つや二つ起きても不思議ではない恐ろしい状況に・・。これは面白すぎでしょう。

 後半は裁判の状況が検事のトミーと、ラスティの息子ナットの視点で描かれていて、事件の真相が最後までわからず一体どうなるのかとどんどんページをめくってしまった。途中で新しい事実が発覚して意外な展開になったり、先の読めないストーリーが面白かった。担当の判事がアジア系の個性的なキャラクターで良かったし、ラスティの弁護士のサンディの抜け目ない戦略に感心させられた。検事のトミー・モルトが意外と良い人で好感が持てたし、ラスティはやはり複雑なキャラクターだったな。ジョン・グリシャムより全体的に地味な作風だけど、派手な盛り上がりがなくてもストーリーが良く出来ているので面白い。この作家の他の作品も読んでみたいけど、既刊はどれもかなり古いのよね。最近のを翻訳してくれないかしら。