面白かった!これは東京創元社がいつも出すタイプのミステリーとは若干毛色が違うような。この出版社は謎解き重視の地味目なミステリーが多い気がするけど、これはどちらかというと女性向けの疾走感のあるサスペンスで、原書がベストセラーになったのも納得の楽しい一作だった。
正体不明の謎めいたボスの元で、他人になりすましてターゲットに近づき情報を探るという怪しげな仕事をしているヒロインの活躍を描いたストーリー。この作家は元々YA小説を書いていて、これが初めての大人向けの小説だそうで、なるほど、ヒロインが何でも出来て有能すぎるところがちょっとマンガっぽかったり、彼女が接近して恋人になり同棲までするターゲットのライアンが、たまたま凄いイケメンで優しくて本当に恋しちゃうような男性だったりするのは少々都合良すぎる気がしたけど、(もしターゲットがキモいオジサンだったらどうしたんだろうとか考えてしまった。)そういうところも含めて面白かった。ヒロインが、詐欺師のような仕事をしているにもかかわらず、どこか純粋なところがあって応援せずにいられないのよね。
ヒロインが任務中に、何と自分の本名と経歴を騙る、見た目もよく似た女性が現れるという展開に、一体どういうことかと話に引き込まれ、ピンチに陥った彼女にハラハラさせられながら、ボスの正体が気になってどんどんページをめくってしまった。リアリティよりもエンタメ性重視のストーリーでぐいぐい読ませるタイプの作品で、多少ツッコミどころがあっても気にならず、とても面白かった。ロマサス好きな女性にもおススメだと思う。