やっと翻訳が出たので発売日に買って読んだわよ。このブログで翻訳の刊行が決まるずっと前に紹介していたしね。原書がハリー・ポッターやトワイライト並みの大ヒット作なのに、日本でなかなか翻訳が出ないのが不思議だったけど、早川が出してくれて良かった。(早川書房は映像化される小説の出版には熱心だから、ドラマ化されると聞いて出したんだろうね。アメリカでこれほど売れた小説なら映像化されるに決まっているからもっと早く出せば良かったのに。)
私は実のところファンタジー小説はあまり読まないのだけれど、これはロマンス小説の新ジャンル "ロマンタジー" という造語を生み出したほどの話題作だから、翻訳が出たらとりあえず読んでみようと決めていた。なるほど、ベストセラーになっただけあってファンタジーにあまり馴染みのない私のような読者でも読みやすく、割とすんなりストーリーに入り込めた。(ドラゴンの尻尾について説明されてもいまいちピンとこないし、グリフォンやワイヴァーンに至っては何それ??という感じで全くビジュアルが想像できなかったけれど、それでも混乱することなく楽しく読めたのでリーダビリティは高いと思う。)
原書の宣伝文句に ”Hunger Games” meets ”Fifty Shades” というのがあったけど、印象としては、「ハンガー・ゲーム」に「ハリーポッター」を足して、リンダ・ハワード風味(?)にしたような感じかな。小柄で虚弱体質なヒロインが、ドラゴン乗りになるために軍事大学に入り、いつ死んでもおかしくない地獄のような訓練を生き残るために奮闘するストーリーで、序盤からかなり過酷な展開が続く。体格的に不利なぶん知恵を働かせて頑張るヒロイン、ヴァイオレットのキャラクターが良いのよね。仲間との友情や、司令官である母親との確執やら、盛沢山な内容をうまくまとめていると思う。ロマンスに関しては、お互いが家族の仇同志で、憎み合うはずの相手に惹かれ合うというシチュエーションに萌える読者は多いんじゃないかな。お相手のゼイデンはカリスマ性のある騎竜団長で、陰のある超美男子というアルファメールのお手本みたいな男性。最初は幼馴染の男性と三角関係になって盛り上がるのかなと思ったけど、幼馴染のほうは早々に嫌な奴と化してしまったのがちょっと残念だった。序盤の印象から、ロマンスもハードボイルドな感じかと思ったけど、後半ヒロインが恋に悩む乙女みたいになったと思ったら、割とすぐにラブラブになって、めくるめく愛の世界(笑)に突入していたわね。前半がかなりハードな展開だったのに、後半は熱々のロマンスが繰り広げられて、若干違和感があったけれど、まあそこはロマンス小説だからね。私はロマンスも割と色々読んでいるので、これくらいのラブシーンはどうってことないと思うけど、そのせいで読者層が限定的になってしまうかなとは思う。出版社は男女幅広い層に売りたいだろうけど、やはり大人の女性向けだろうね。海外ではファンタジーとロマンスの融合が画期的で話題になった小説だけど、ロマンス小説が下火の日本ではそれがあまり利点にならないからねぇ。「トワイライト」が流行ったあとにヴァンパイアのロマンスがたくさん翻訳されたときのように、他の出版社が追従して "ロマンタジー" を出したらブームになるかもしれないけど、それもなさそうだし。
あとは翻訳でセリフの訳し方がちょっと気になった。この訳者さんはファンタジー小説を多く手掛けているみたいだけど、この手の小説はヤングアダルト向けが多いから、同じようなノリで訳したのかなあ。登場人物の話し方が全体的に軍人というより中学生みたいで子供っぽすぎて違和感あった。上官に何か尋ねられて「うん」と返事するとか、ないわ~。大人が入学する軍事大学が舞台なんだから、もっと軍人らしい話し方に訳したほうが良かったと思う。
これが日本でどれだけ売れるかわからないけど、クリフハンガーな終わり方だったので続きも出してほしい。出版社が割と力を入れて宣伝しているみたいだから、2作目も出ると信じたいわ。
※ジャンルはロマンタジーだけど、記事のカテゴリーは近いところでパラノーマルロマンスにしておきました。