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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

スローンはもう手遅れだから コリーン・フーヴァー

スローンはもう手遅れだから

スローンはもう手遅れだから

  • コリーン・フーヴァー
  • 二見書房
Too Late: Definitive Edition (English Edition)

Too Late: Definitive Edition

  • Hoover, Colleen
  • Grand Central Publishing

 

 この原書は元々Wattpadで一章ずつ連載する形で公開していたそうで、時期的には "It ends with us" の少し前に書かれたもの。当初は電子版を無料公開していたらしいけど、加筆改稿したものを昨年、大手出版社が刊行して、発売時にNY Timesのベストセラーリストで1位に入っていたのを見た。確かにこれは無料で公開するのはもったいない力作だと思う。辛く苦しいロマンスだけど、とても読み応えのある内容だった。

 ヒロインのスローンは大学生で、複雑な事情があり、サイコパスのようなボーイフレンドの元から逃げ出すことが出来ず耐えている。そのボーイフレンドが麻薬の売買をしているため、潜入捜査に送り込まれた捜査官のルークがヒーロー。ありがちな設定ではあるけれど、読んでいて胸が痛くなるような過酷なストーリーで、お気楽なロマサスとは一線を画していると思う。ロマンス小説はハッピーエンドがお約束だけど、これはまさかバッド・エンドじゃないよね??と本気で心配になるくらいヘビーな内容だった。

 スローンの境遇が悲惨すぎて泣けるし、彼女を愛したことでルークも苦しむことになって本当に辛い。とんでもなくマズい状況で恋に落ちてしまった2人の関係が一体どうなるのか心配で、どんどんページをめくってしまった。ルークは優しくて献身的で、"It ends with us" のアトラスのキャラクターに通じるものがあるし、スローンが支配的なボーイフレンドに耐えているところはリリーを連想させるので、書かれた時期的にも、この作品の発展形が "It ends ~" なのかなという気がした。"It ends~" が気に入った人ならこれも気に入ると思う。

 夢中になって読んでいたら止まらなくて寝不足になってしまった。(休日で良かった。)ここまで胸に迫るロマンスを書く作家はなかなかいないよねぇ。それにしてもこのセンスのない邦題と残念なイラストの表紙が作品を台無しにしていると思うのは私だけかしら。ラノベの読者を取り込もうとしているのかもしれないけど、これでは売れるものも売れなくなってしまうと思うわ。タイトルは原題をそのままカタカナ表記にしたほうが良かったのでは??(邦題も表紙のデザインも公開されていない時にネット書店で予約購入したので、画像が公開された時に、この表紙は勘弁して~と思った。)売れないと翻訳が刊行されなくなるし・・。二見書房さんは海外小説はどんどん縮小しているから、コリーン・フーヴァーを読めるのもこれが最後かしら・・。"It ends with us" の映画が先月全米で公開されて評判も割と良いみたいだから、日本で公開されたら原作小説が話題になって、作家に注目が集まるかもしれないけど。