スティール・ダガー賞受賞作にしてはイマイチなスパイもの。なかなか読み進まなくて途中で別の本を読んだりしていたので読了に時間がかかってしまった。内容的には悪くないので、同じプロットでもっと上手い作家が書いたら面白かっただろうと思う。アクション満載のスパイものなのに、文章のせいかスピード感や緊迫感があまり感じられず、ストーリーに入り込めなかった。この作者は元々は脚本家らしいけど、その割にあまり気の利いたセリフもなく、たまに妙な比喩があってハァ?と思ったし、状況の描写が平面的で迫力に欠ける気がしたなぁ。
主人公は自分のことをいけ好かないケツ穴野郎と言っているけど、語り口から人を見下したような性格の悪さが感じられて実際あまり好きになれないキャラクターだった。暗殺を請け負っているエージェントだから、仕事柄当然好青年というわけにはいかないにしても、主役なのだからもう少し魅力が感じられる人物でないと読んでいてつまらない。
エージェント17である主人公が前任者のエージェント16を暗殺するというのが今回の任務で、暗殺の任務が進行するのと同時に主人公の過去が語られていて、気の毒な子供時代のエピソードなんかが盛り込まれているのだけれど、ありがちな不幸話で本筋のストーリーが遮られ、スピード感が削がれているように感じた。
このストーリーは、最初から "16"を暗殺する任務が胡散臭くて裏に何かあるのが見え見えで、"16" もそこまで悪い人間ではなさそうだったから、"17"と"16" の対決にあまり面白味を見いだせず、それなのにその部分が長いものだから冗長に感じてしまったのだけど、終盤に大きな陰謀が明らかになってからはそこそこ面白かったと思う。
"17" が年寄りの "16" のことを「老害」と言っていて、元の英語は何だろうとちょっと気になって調べたところ "boomer" らしい。(原書の試し読みにはその部分がなかったけど、レビューに書いている人がいた。間違いだったらすみません。)口の悪い主人公だから訳者さんはうまく翻訳したわねと思ったけど、どうやら最近は年配の人を揶揄する "OK boomer" というスラングが若者世代の間で流行っているらしい。知らなかった・・。たまたま調べてみたら色んなことがわかって勉強になったわ。

