これは凄く良かった。この作者の既刊3作の中で一番気に入った。大学時代のルームメイトで親友同士のアリスとアイリーンの友情とそれぞれの恋愛を描いたストーリー。作家のアリスはマッチングアプリで知り合ったフェリックスという倉庫勤務の男性と付き合い始め、アイリーンは幼馴染のサイモンと友達以上恋人未満の関係を続けている。どちらも少し捻くれたところがあり好人物とは言えないキャラクターだけど、そんな彼女たちの屈折した恋愛模様がとてもリアルで引き込まれた。
アリスとアイリーンが社会問題に関して持論を展開する長いメールのやりとりは、やたらと哲学的でスノッブな感じがしたけれど、世の中への不満を吐露することで自分自身の不毛な人生に対する鬱憤を晴らしているようなところがあるような気がした。小説家として成功したアリスが有名になった自分に嫌気がさしたり、出版業界に幻滅したりするところは作者自身の考えが投影されているのかな?アリスとフィリックスのカップルは最初はあまりしっくりこなかったけれど、結局この二人は破れ鍋に綴じ蓋だと納得。
アイリーンは5歳年上のサイモンとは幼馴染で二人の関係は長い歴史があり、少女の頃から彼に想いを寄せているにもかかわらず、傷つくのを恐れて恋人同士になれずにいるのがもどかしい。敬虔なカトリックのサイモンは穏やかで優しい人だけど、遠慮がちな性格が仇となってあと一歩を踏み出せない。中盤で2人の気持ちがやっと通じ合ったかと思ったのに、やはりすれ違ってしまいアイリーンが一人で泣きじゃくる場面にもらい泣きしてしまった。恋愛って簡単にはうまくいかず辛いものよね。所謂ロマンス小説ではないので、この二人にハッピーエンドが訪れるのかわからなくてハラハラしながら読んでいた。社会的なテーマが盛り込まれているけれど、基本的には切ない恋愛小説だと思うのでロマンス好きな読者の方におすすめ。特にサイモンのアイリーンに対する想いには胸を打つものがあると思う。
アラサーになって学生時代に思い描いていた理想とは程遠い人生を送っている自分に幻滅し将来を憂いながら問題だらけの世界で生きている登場人物たちの姿が印象的で、友情に関しても恋愛に関しても、自分に自信がなく本心を隠してしまうことで関係を拗れさせてしまう不器用な若者たちをじれったく思いながらも共感する部分が多かった。
次作の"Intermezzo"は男性が主人公だそうで、それも刊行予定とのことだから楽しみに待つとしよう。この作家は世界中でベストセラーになっていて、中国でも翻訳が刊行されていてかなり売れているというのが意外だった。China’s censored feminist movement finds solace in Sally Rooney | China | The Guardian 中国でそれほど人気なら日本でももっと人気が出ても良いのになあ。

