この作家はパリ生まれのフランス人で母語はフランス語だけど英語で小説を書いたとのこと。(アメリカの大学で学んでアメリカ人の夫と結婚してアメリカ在住らしいが。)そのせいか文章が独特な感じで、読み難いわけではないけど一味違う印象だった。内容はよくある拉致・監禁もののサスペンスで、そこそこ面白かったけど特別目新しいものはなかったように思う。
エイダン・トマスは妻を癌で亡くし、シングルファーザーとして一人娘を育てている寡夫。容姿も整っていて人あたりも良く地域の人に好かれているけど、実は女性を拉致・監禁して殺す連続殺人犯で、物語は現在彼に囚われているレイチェルと、彼の正体を知らずに恋しているバーテンダーのエミリー、彼の娘で13歳のセシリアの3人の視点で語られている。何故かレイチェルのパートだけは2人称で書かれていてすごく違和感があった。(「あなたは~する。」とか書かれていると、あなたって誰よ??と困惑するのでこの書き方はやめてほしい。)
エミリーはハンサムな男やもめのエイダンにアプローチしていて、2人のやりとりは彼がサイコパスでなければ微笑ましくてロマンス小説かと思ってしまう程で、殺人鬼がこれほど魅力的に振舞えるという事実に恐ろしくなる。1人の男性が魅力的な恋人でありながら、女性を拉致して殺すサイコパスでもあり、娘思いの父親でもあるという多面性を持っていることが興味深い。
何年も彼に囚われているレイチェルが、殺されないように注意深く行動しながら脱走の機会を伺っているのは相当タフでないとできないことなので凄い。彼の娘のセシリアに情が移ってしまう人間らしいところもあり、共感度の高いキャラクターで良かった。
拉致監禁ものは結構たくさん読んだけど、印象に残っているのは英米の小説ではなくフランスの「その女アレックス」とデンマークの特捜部Qの1作目かな。監禁方法が独特で凄く怖かった。特捜部Qは最近Netflixでドラマ化されたものも見たけど、脚本家が有能なのか、小説のネタを活かしながら若干の改変を加えて、とても面白いドラマに仕上がっていた。

