前作「美しい世界はどこに」のほうがロマンスに関しては良かったけど、これもなかなか面白かった。この新作は既刊3作よりもページ数がかなり増えて分厚くなっているけど、一旦読み始めたらストーリーに引き込まれて長さはあまり気にならなかった。
この作家は人間関係や恋愛に関しての洞察が本当に鋭くて感心せずにいられない。複雑な状況に対処する登場人物の複雑な思考を見事に描いていて、登場人物の頭の中を覗いているような感覚の読み心地が癖になるのよね。以下多少ネタバレしているのでこれから読む予定の方はご注意を。
32歳の弁護士ピーターと、22歳でプロのチェスプレーヤーのアイヴァンという全くタイプの違う歳の離れた兄弟それぞれの恋愛や、兄弟同士の確執、父親を癌で亡くした2人の喪失感を描いたストーリーで、入り組んだ人間関係がとても興味深い。
ピーターが学生時代から長く付き合っていたシルヴィアは、数年前に交通事故に遭い、その後遺症で体の痛みを抱えて生きていくことになり、彼に迷惑をかけたくないと恋人としての関係を終わらせた。彼は今もシルヴィアを愛しているけれど、彼女の言うことを受け入れて今は友人として付き合っている。ピーターの彼女に対する思いは深く、これをもしニコラス・スパークスなんかが書いたら、元恋人に献身的に尽くすピーターの純愛ストーリーになるところだろうけど、彼に別の若い恋人が出来てしまうところがサリー・ルーニー流で、2人の女性との関係に悩み、自分の気持ちに混乱してあたふたするピーターが面白い。ピーターの新しい恋人のナオミは貧乏な大学生で、金欠になるとパパ活(?)みたいなことをしていたような女性だけど、ピーターと付き合っているうちにお互いに情が移って本気の恋になっていく。
アイヴァンはチェスの試合が行われた会館で働く30代半ばのマーガレットに惹かれ、年の差にもかかわらず熱烈な恋に落ちて付き合うようになる。マーガレットは素敵な女性だけどアル中の夫と別居中という状況で色々と問題を抱えている。年上の女性をひたむきに愛するアイヴァンが可愛い。
ピーターは一体2人の女性のどちらを選ぶのだろうと興味津々で読んでいたけど、この結末は・・・。マヤ・バンクスじゃあるまいし、こんな関係は無理があると思うけど、これがアイルランドの最先端の恋愛事情なんだろうか。まあこれはこれで面白いと思うけど。どの登場人物も印象深く、読み終わっても後を引くストーリーで色々考えてしまった。好みの分かれる作家かもしれないけど、独特な魅力があって私はすっかりハマってしまった。

