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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

ギリシャ悲劇の殺人 アレックス・マイクリーディーズ

ギリシャ悲劇の殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ギリシャ悲劇の殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • アレックス・マイクリーディーズ
  • 早川書房
The Maidens: The Dark Academia Thriller from the author of TikTok sensation The Silent Patient (English Edition)

The Maidens

  • Michaelides, Alex
  • Weidenfeld & Nicolson

 

 前作と比べると評価が低いようだけど、読んでみたらこれも十分面白かった。「サイコセラピスト」のような傑作はそうそう書けるものじゃないので、大ヒット作の後でプレッシャーを感じながら書いた2作目がこのレベルなら全然OKだと思う。

 主人公は女性の心理療法士で夫を亡くしたばかりの30代の未亡人。まだ悲しみから立ち直れていないところに、大学生の姪の友人が殺害される事件が起き、彼女の元へ駆け付け犯人を捕まえようとするけれど、不安定な精神状態で思い込みが激しく、迷走して何をしでかすのかとハラハラさせられた。彼女に犯人だと疑われている大学教授もまた一癖も二癖もある人物でいかにも怪しそうだけど、他の誰が犯人だとしてもおかしくない展開で、これほど赤いニシンがたくさんいるミステリーも珍しい。先が読めないストーリーが面白かった。教授のお気に入りの女子学生のグループ「メイデンズ」の存在も不気味で興味深く、大学のフラタニティやソロリティで事件が起きるキャンパスもののミステリーのような面白さもあるし、ギリシャ神話をモチーフにした殺人が神秘的な雰囲気を盛り上げていて良かった。

 犯人の正体がとにかく衝撃的で、明らかになった事実はとんでもなく不快だけど、嫌ミスとしてはかなり面白いと思う。原書のレビューを見るとこの結末は賛否両論のようで、まあ確かに多少無理があるとは思うけど、インパクトのある結末で私は気に入った。

 サイコセラピーを学んだことのある作者だけに心理面の洞察が鋭くて、父と娘の関係が及ぼす影響とか、なるほどと思うところが色々あった。ファザコンの主人公の自己認識が歪んでいて人を見る目がないのも仕方ないわよね。

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