ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

メイフェアの不運な屋敷に幕は下り M・C・ビートン

 シリーズ4冊読破!全作翻訳されたということは、よほど人気があったのね。確かにこれは面白い。時代の雰囲気が感じられる本物のヒストリカルだという気がする。正直、一話ごとに変わる屋敷の借り手のロマンスは毎回似たり寄ったりでワンパターンなんだけど、シリーズ通して出てくる使用人たちが気になって、彼らが幸せになるのを見届けるまで読まずにいられなかったわ。

 この作者は当時の生活について蘊蓄が深いようで、窓の多い家には窓税が課せられていたとか、そういうちょっとしたネタも興味深いし、原書が書かれたのが1980年代だからか、今だったらカットされそうな、汚い言葉を使った使用人が口に石鹸を突っ込まれてゴシゴシやられたりする場面もあったりするのが面白い。何より当時の貴族の尊大さや差別意識がとてもリアルで、人々が生まれついた階級を受け入れることが当然と考えられていた時代を的確に描写していると思う。最近は、登場人物が現代の思考で行動しているようなヒストリカルが多くて、まあそれはそれで面白いけど、こういう古風な作品が人気だということは、やはり読者は時代感のあるヒストリカルを求めているということなのかな。

 以下ネタバレ

 

Read More 使用人たちは、宿屋の経営者になってみんなで幸せに暮らすのかと思っていたけど、意外な展開で、あれほど団結していたみんながそれぞれに夢をかなえて別の道を行くことになるとは、嬉しいような、寂しいような。最後に従僕のジョセフが67番地の屋敷の地階を見下ろす場面が泣ける。このちょっぴりほろ苦いラストが秀逸で、最後まで読んだ甲斐があったというもの。余韻を感じさせる結末が流石。良いもの読ませてもらったわ。

 

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