ロマンス小説感想日記

ロマンス小説感想日記

海外のロマンス小説やミステリー小説のブックレビュー

見知らぬ人 エリー・グリフィス

 出版社イチオシの傑作ミステリーだそうで。確かに犯人はなかなか見抜けない意外な人物だったし、作中作をうまく殺人事件に絡めて書いていて上手い作家なんだと思う。でも自分の好みとはちょっと違うかな・・。

 ストーリーが3人の女性の視点で代わる代わる語られる形式で、その3人というのが、離婚したシングルマザーで英語教師のクレア、事件の捜査を担当するインド系の女性刑事ハービンダー、そしてクレアの娘で14歳のジョージア。クレアの同僚で友人の女性教師がナイフで刺殺される事件が起きるのだけれど、最初のうちは捜査の進行は割とゆっくりで日常の描写が多く、学校での教師の仕事についてや、娘をどこそこの大学に進学させたいとか、テレビのリアリティショーがどうのという話が書かれていて、それはそれで面白いけどページターナーという感じではなく、どちらかというと地味なミステリーだと思う。イギリス人がみんな「ストリクトリー・カム・ダンシング」が大好きということはわかった。同レベルの大学をまとめてオックスブリッジとかラッセル・グループとか言っているのは、日本で東京一工とかMARCHとか言うのと似たようなものだろうからどこの国も同じだなと。

 主人公のクレアはスノッブなタイプで何だかあまり好きになれなかった。娘のジョージアもいかにも今どきの子という感じで何を考えているのかわからないし、2人の間に親子愛みたいなものもそれほど感じられず、この親子にはあまり共感できなかった。3人の中では刑事のハービンダーに一番興味をそそられた。インド系のシーク教徒で、レズビアンだけどそのことは親には内緒にしていて35歳で実家暮らしという状況なので、辛辣な性格なのも納得だけど、皮肉のきいたコメントが面白い。特別仕事熱心なタイプというわけではないけど意外と優秀で勘が鋭く、独特なキャラクターで良かった。

 クレアが日記帳に手書きで日記を書いていて、ジョージアはオンラインの日記サイトに書いているというのは面白い対比だと思う。日記の内容は確かに興味深いけど、日記に本音を吐露しているわりにクレアというキャラクターがいまひとつ見えてこなかったのは、日記の記述がやけに取り澄ましていて小説みたいだからかな。

 後半は犯人捜しが盛り上がり、意外な犯人に驚かされた。特別好きなタイプのミステリーではないけれど、作中作のゴシック小説に加えクレアの日記の内容も挟みつつ3人の視点で語られる複雑な構造のストーリーなのにややこしいと感じることなくスムーズに読めるのは流石だと思うし、これを高く評価する人がいるのはわかる。ヴィクトリア朝の文学に浪漫を感じるような人には堪らない作品なんだろうね。

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