ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

無痛の子 リサ・ガードナー

 DDウォレン刑事シリーズ。「棺の女」のフローラにも驚かされたけど、本作に出てくる無痛症の医師アデラインもすごいキャラクターで、生まれも育ちも特殊すぎる女性だった。父親も姉も殺人者という一家に生まれ、遺伝子異常で痛みを感じない先天性無痛症という珍しい疾患があるにもかかわらず、親切な老医師が引き取って養女にしてくれたお陰で医学部を出て精神科医になり、痛みの専門家として働いているという。痛みを感じないというのは良さそうに聞こえるけど実際はものすごく大変で、大人になるまで生きられないことが多いらしい。

 DDは本作の最初でひどい怪我をして、休職中なのに痛みに耐えながら非公式に捜査に加わっているのだけれど、彼女の夫のアレックスが素晴らしく出来た夫で、痛みで八つ当たりする妻をやさしくなだめて甲斐甲斐しく世話をし、文句も言わず家事や育児を一手に引き受けてくれるという、ロマンス小説の中でしかお目にかかれないような理想的な男性だった。優しくてハンサムで妻を溺愛しているアレックスのキャラクターは、この作者が昔ロマンスを書いていた名残だなと思った。

 今回DDが捜査するのは死体の皮を剥ぐシリアルキラーのおぞましい事件で、その手口が既に亡くなっているアデラインの実父が犯した殺人と酷似していることがわかり、彼女も捜査に協力することに。アデラインのキャラが秀逸で、特殊な疾患のせいで孤独に生きてきた彼女の生い立ちが非常に興味深く、人間は生まれか育ちかという問題について考えさせられた。終身刑で刑務所にいる彼女の姉も巻き込んで事件は意外な方向へ進み、最後まで緊迫感の持続するストーリーで面白かった。

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