ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

まだすべてを忘れたわけではない ウェンディ・ウォーカー

 独特な作風の心理サスペンスで割と面白かったけど、表紙のイラストが内容と合っていなくて読者を逃しているような気がする・・。

 女子高生が残酷なレイプの被害に遭った事件で、最初のうちは誰かわからない中年男性らしき人の視点で淡々と書かれているから話に入り込みにくかった。その男性が被害者の治療にあたっている精神科医だということがわかり、恐ろしい経験をした人のPTSDを緩和するために記憶を消去するという治療に驚かされ、そこから内容に興味が沸いて読むスピードが加速していった。記憶が脳に収納される仕組みの解説は非常に面白く、目から鱗が落ちた。

 けれども、その精神科医が一癖も二癖もあるキャラクターで、興味深くはあるけど人間的にはあまり好きになれず、医者が患者の症例を紹介するノンフィクションみたいな語り口がいまひとつだった。持論が長々と展開され、自己啓発本みたいになっているところもあったし。内容的にはとても面白いのにそこが残念だった。

 投薬で記憶を消すという治療は衝撃的で、かなり面白い題材だと思う。嫌な目に遭ったことを忘れてしまえたら楽だろうと思うけど、そんなに単純にはいかないのね。それにしても精神科医って患者を操ろうと思えばできてしまうから恐ろしいわ。最終的に事件は解決されるものの、すっきりしない部分もあって、どちらかというとイヤミスに分類される作品だと思うけど、親が子供を思う気持ちには共感できた。

All Is Not Forgotten

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