Washington Poeシリーズ2作目。あらすじに「冤罪」という言葉があったので、逮捕して刑務所に送り込んだ犯人が実は冤罪だったと判明するなんて警官にとってはさぞ辛いことだろうと、主人公の刑事が良心の呵責に苦しめられる話だと思って読み始めたらそうではなく、頭の切れる服役中のサイコパスが冤罪を装って自由になろうとする事件だった。
主人公のポーによれば、シェフというのはサイコパスの職業としては上位に入るそうで、意外な気もしたけど、アニマルウェルフェアの逆をいく、とんでもなく残酷な飼育法で育てられた鳥を食材として使う場面があって、こういうのを平気で使えるシェフならサイコパスの素質あるよなと思った。刑事のポーと殺人犯のキートンとの知恵比べみたいな事件で、キートンの巧妙な策略を暴くためにポーと仲間たちが奔走するストーリーが良かった。
ポーと情報分析官のティリーの凸凹コンビは相変わらず楽しかった。二人ともインパクトのある個性的なキャラクターで、特にティリーのようなタイプには萌える人がいそう。ポーとティリーの掛け合いはITに疎いオジサンとコンピューターの天才少女のコントみたいだけど、二人の年齢は2~3歳しか違わないと1作目に書いてあったので、実際は同年代なのよね。(巻末の解説の人も、「年齢、キャリアともに隔たりがある男女の~」とか書いているけど、年齢は隔たってないわよ。)上司の女性刑事フリンには同性のパートナーがいるということも判明したし、バラエティに富んだキャラクター構成だわね。
内容的には前作のほうが好きだけど、今作も面白かった。アメリカは一事不再理だけど、イギリスではその原則が撤廃されているのか。普段読むのはアメリカの作家が多いから、そういう細かい違いも興味深い。イギリスの刑事ものはロンドンとかの都会が舞台のことが多いけど、これは田舎のカンブリア地方が舞台になっていて珍しくて良いと思う。出版社によれば次作も刊行予定とのことで、シリーズものの警察小説はキャラクターに魅力がないとなかなか読み続けられないけど、このシリーズは固定ファンがつきそうな魅力的なキャラクターがいて良いわね。