ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

夜の果てにこの愛を レスリー・テントラー

 秘密を抱えたヒロイン。なので感想を書こうとするとどうしてもネタバレになってしまう。これから読む方はレビューを読まないほうが楽しめると思う。

 ロマンティックサスペンスと言えば、元軍人のヒーローが仲間とともに軍事作戦的に事件を解決するようなパターンが多いけど、今作のヒーローはシングルファーザーのホテル経営者で、良識ある普通の人。アルファメールも良いけど、こういう普通に素敵なヒーローも好きだな。ためらいながらヒロインを誘う草食系なところも新鮮だった。派手なドンパチの場面はあまりなく、静かなミステリーという感じ。過去を打ち明けられず身を引こうとするヒロインの苦悩が切ない。お互いに惹かれる気持ちを抑えながらジリジリするところが良かった。ヒーローの弟と妹も出てきて家族ドラマ的なところもあり面白い。

 ヒロインの過去を知り、ショックを受けて一度は彼女を突き放すヒーロー。ヒロインの秘密がいつバレるかとハラハラしながら読んでたけど、このヒーローのリアクションはまあ当然よね。むしろ無条件で受け入れたら嘘くさいし。でも拒絶されたヒロインの悲しみには胸を打たれた。ヒーローも思い悩んでヒロインの元に戻って来たけど、葛藤がリアルで、この作者はそういう人間ドラマの描き方がうまいと思った。結末に関しては、ヒロインの立場が微妙にグレーゾーンなのでどうするのかと思ったら、嵐のどさくさで解決してしまうわけね。まあこういうのもアリよね。

 この作品、最初はヒロインの設定が、少し前に読んだローラ・ケイの「ゆらめく思いは今夜だけ」にちょっと似てると思ったんだけど「ゆらめく~」のほうは元軍人ヒーローの典型的なロマサスなのに対し、こちらは全体的に落ち着いた雰囲気のミステリーで、これはこれで良かったと思う。シリーズの次作は俳優の弟が主役らしい。個人的には主人公が芸能人なのはあまり好きじゃないけど、今作が割と良かったので、もし次が出るなら読みたいと思う。

夜の果てにこの愛を (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション(ロマンス・コレクション))

夜の果てにこの愛を (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション(ロマンス・コレクション))

  • 作者: レスリー・テントラー,石原未奈
  • 出版社/メーカー: 二見書房
  • 発売日: 2018/08/21
  • メディア: 文庫
Before the Storm: Rarity Cove Book One (English Edition)

Before the Storm: Rarity Cove Book One (English Edition)

  • 作者: Leslie Tentler
  • 出版社/メーカー: Left Field Press
  • 発売日: 2015/10/20
  • メディア: Kindle

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