ロマンス小説感想日記

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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

パンドラの秘めた想い リサ・クレイパス

 12月はライスにクレイパスと、ロマンス小説界の二大リサ(?)の新作が読めて嬉しい限り。出版界も年末商戦に人気作家を投入しているのかな。以下多少のネタバレあるかも。

 今作のヒーローは「冬空に舞う堕天使と」のエヴィとセバスチャンの息子だったのね!もう孫までいる2人がいまだにイチャイチャしている場面がプロローグに書かれていてニヤニヤしてしまった。壁の花シリーズの中でも冬は人気が高いもんね。作者も思い入れがあるのかな。ヒーローは父親似の超ハンサムで、貴族の義務や責任をよく理解している優等生タイプだけど、いけないと思いながらも欲望に負けて人妻との情事をズルズルと続けていて家族も眉をひそめている。その愛人は手管に長けていて彼のやや激しい欲求も満たしてくれるので別れられないらしい。それなのにヒロインと出会ってからは愛人とも会わずにヒロイン一筋になって、どんどん彼女にのめり込んでいくのよね~。

 ヒロインはこの手の小説に多い、自立を重んじて結婚を望まない変わり者。こういうタイプのヒロインは、下手に書くと“私は変わり者”アピールが鬱陶しい、某女芸人のネタのようなイラッとくる女になってしまうけど、この作者はさすがに上手くて、ちゃんとボードゲームの製造で身をたてるという自立の根拠もあるし、風変りなのは親のネグレクトのせいで世間から隔離されて育ったからだし、変わり者の自分が嫌で、きちんとしたレディになりたいのにうまくいかないという健気なところもあって可愛いヒロインだった。子供の頃に父親の虐待で耳を傷めて、三半規管がやられてしまったのか平衡感覚に異常があり、ダンスをうまく踊れないんだけど、ヒーローが僕に体を預けてくれれば大丈夫とヒロインにダンスを教える場面が素敵。全編通してヒーローのヒロイン好き好きオーラがすごくて、クレイパス節炸裂という感じ。それに世間知らずのヒロインのちょっとしたつぶやきがいちいち面白くて、つい吹き出しちゃう場面もありユーモアもたっぷり。放蕩者という噂のヒーローに、やっぱり病気を持ってるのね??と聞くところとか笑えた。

 いやあ、良かった。ロマンスの始まりは、夜会で偶然2人でいたところを見つかってスキャンダルになってという、ありがちな筋立てだったけど、書き方次第でこんなに素敵なロマンスになるんだからやはり作者の力量よね。充分堪能させてもらいました。次作はこのシリーズでちょこちょこ活躍していた女性医師がヒロインらしいので、ちょっと毛色が変わってまた楽しみだなあ。

パンドラの秘めた想い (ライムブックス)

パンドラの秘めた想い (ライムブックス)

  • 作者: リサ・クレイパス,緒川久美子
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2018/12/07
Devil in Spring: The Ravenels, Book 3 (English Edition)

Devil in Spring: The Ravenels, Book 3 (English Edition)

  • 作者: Lisa Kleypas
  • 出版社/メーカー: Avon
  • 発売日: 2017/02/21

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