ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

奪われたキスの記憶 メアリ・バートン

 Texas Rangerシリーズの1作目だけど2作目以降が翻訳される気配なし。調べてみたら2作目は今作に出てきた精神科医の女性医師が主役らしい。この作者はハーレクインヒストリカルで作家デビューした後、ロマンティック・サスペンスに転向したみたいだけど、今作はサスペンス主体でロマンスは付け足し程度だった。

 ヒロインは連続殺人犯の被害者で唯一の生き残り。しかも襲われた時の記憶を無くしてる。ヒーローは彼女の事件を担当することになったテキサス・レンジャー。このテキサス・レンジャーというのは、テキサス警察で難事件を担当するエリート集団で、カウボーイハットとブーツを着用することになっているらしい。ヒロインがシリアルキラーの標的になって唯一生き残ったという設定は、J・L・アーマントラウトの「甘い悦びの罠に溺れて」と似てるけど、「甘い悦び~」はロマンス色が強めでヒーローが限りなく優しいのに対し、こちらは犯罪捜査の部分を主体に書いた真面目な警察小説という感じで、鑑識や検死官もちゃんと仕事してるし、ヒーローも事件の解決が第一で、最初のほうはヒロインに記憶を取り戻させようと必死なあまり、彼女に対してかなり強引な態度で感じ悪かったくらい。事件の顛末はなかなか興味深くて面白く読んだけど、そのぶん人物描写が希薄な感じはした。ヒーローは難事件を担当するくらい優秀な捜査官なんだろうけど、あまりカリスマ性が感じられなかったわね。テキサス・レンジャーというポジションも普通の警官とやってることは一緒で、カウボーイハットをかぶってること以外あまり違いがない気がしたし、人物像にこれといった特徴がないから印象に残らない。話は面白いので、もう少しキャラクターに魅力があると良かった。 

 推理小説としてはどんでん返しもあり普通に面白い作品だったけど、これをロマンティック・サスペンスのカテゴリの中で考えるとちょっと硬派すぎてあまりウケない気がする。この作者は本国ではリサ・ガードナーなんかと比較されているらしい。ガードナーもロマンス作家出身だけど今は立派なサスペンス作家になっているから、メアリ・バートンもこういう中途半端に硬派なロマサスを書くくらいなら生粋のサスペンス作家を目指すほうが良いかもね。 

奪われたキスの記憶 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション(ロマンス・コレクション))

奪われたキスの記憶 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション(ロマンス・コレクション))

  • 作者: メアリ・バートン,高橋佳奈子
  • 出版社/メーカー: 二見書房
  • 発売日: 2016/12/19
  • メディア: 文庫
The Seventh Victim (Texas Rangers)

The Seventh Victim (Texas Rangers)

  • 作者: Mary Burton
  • 出版社/メーカー: Pinnacle
  • 発売日: 2018/01/30
  • メディア: Kindle

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