この作品は4年くらい前の刊行だけど、C・リンデンはこれ以降は翻訳されていないわね。この作者の「公爵令嬢の恋愛入門」が良い話でお気に入りだけど、ドタバタした印象であまり好みじゃなかった作品もあるので、自分の中では当たり外れのある作家という認識になっている。今作はドタバタという感じではないけど、しっとり系というわけでもなく、軽めの可愛らしいロマンスという印象。
放蕩者と壁の花のロマンスだけど、ヒロインのことが気になって彼女のことばかり考えてしまうヒーローの気持ちがよく伝わってきて、そういう描写はなかなか上手いと思ったけど、ややストーリーの盛り上がりには欠けるかも。ヒーローは早くに両親を亡くして親戚の家に引き取られて孤独な少年時代を送ったとのことで、気の毒ではあるけどそこまで悲惨な境遇というわけでもなく、ヒロインも、母親が厳しい人で娘の行動にいつも口を出してはいるけど、それも娘のことを思っているからだし、その母親が病気になって田舎に療養に行くんだけど、もしかして死ぬのか?!と思ったら、普通に回復して帰って来るし、ストーリーに関してあまり重いところがなく、この時代の割と普通の貴族の人たちのロマンスという感じで、そういうのって逆に珍しいかも。壁の花のヒロインも、結婚したくないと思ってるわけじゃなく、背が高すぎて見た目もぱっとしないため求婚者が現れなかったから売れ残ってしまったけど、いつか素敵な人が求婚してくれるかもしれないと一応希望も持っていて、そういう普通っぽいところは好感度大だった。あまり深刻な話ではないので楽しく読めるし、2人の距離が縮まっていく様子が丁寧に書かれているのは良いけど、やっぱりストーリーがちょっと平坦な気がしてあと一歩かな。
- 作者: キャロライン・リンデン,寺尾まち子
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2014/06/10
- メディア: 文庫
Love and Other Scandals (English Edition)
- 作者: Caroline Linden
- 出版社/メーカー: Avon
- 発売日: 2013/07/30
- メディア: Kindle版