ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

薔薇の目覚め アシュレー・マーチ

 この作品、感想を書くまでもないかと思ったけど、(もうだいぶ前に刊行された本だし、あまり人気なさそうだし・・)せっかく読んだから一応書いておこう。

 この作者、こんなひねくれたロマンスを書くなんて、皮肉屋に違いないわね。夫が浮気相手の女性と駆け落ちする際に事故に遭って死んでしまい未亡人になったヒロインと、その浮気相手の女性の夫だったヒーローとのロマンス・・・というと薄幸のヒロインの切ない話かと思うけど、夫の浮気のことはずっと前から知っていたから亡くなっても全然悲しんでないし、むしろ浮気夫から解放されてやりたい放題。喪中なのにハウスパーティを開き、喪服でないドレスを着てダンスを踊ってスキャンダルになり、義父に家を追い出されるとか、どんだけ~。まあ、ヒロインの行動を監視にやって来るヒーローもどうかと思うけど、見張っているうちに彼女に惚れてしまうとはね。前の奥さんが浮気相手と一緒に死んでしまって、次に好きになったのがこんなプッツン女だなんて、踏んだり蹴ったりだわね。こう書いているとコメディみたいだけど、笑えるところは全く無い。ヒロインはこれまで夫の浮気を誰にも打ち明けれられず孤独だったので、もう孤独な思いをしたくないからと夫の死を悼むハウスパーティーを開き、客の前では夫を愛してたフリをするのだと大真面目に考えていて、不幸に漬かって思考も鬱々としているから全体的に暗い。しかも各章の冒頭に、浮気相手の女性がヒロインの夫に送ったラブレターの引用があるのはどうなのよ・・。浮気とはいえ真剣に愛していたらしいけど、その事実を各章毎にいちいち思い出させなくてもいいでしょうに。ラブレター自体は恋する女性の気持ちが綴られているロマンティックなものだけど、不倫を美化したいのか・・作者の意図が謎だわ。

 夫の浮気に耐えてきたヒロインは気の毒だと思うけど、夫が亡くなってからの自暴自棄な行動は、かまってちゃんとしか思えず共感できない。それでもどういうわけかヒーローにプロポーズされ、形式上の結婚をするわけだけど、そもそも夫の浮気相手だった美女と結婚していた男性と再婚するかなあ。その美女に対して劣等感を抱えているのに、その女性を熱愛していた男性と結婚するなんて自虐的すぎないか?それなのに一旦お互いの気持ちを告白し合ったらオールオッケーでラブラブになってメデタシメデタシとか、都合良すぎてちょっと納得いかないわね。なんだかひどく屈折したロマンスだったわ。

薔薇の目覚め (ライムブックス)

薔薇の目覚め (ライムブックス)

  • 作者: アシュレーマーチ,Ashley March,水山葉月
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2015/01/09
  • メディア: 文庫
Romancing the Countess (Signet Eclipse) (English Edition)

Romancing the Countess (Signet Eclipse) (English Edition)

  • 作者: Ashley March
  • 出版社/メーカー: Berkley
  • 発売日: 2011/09/06
  • メディア: Kindle

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