ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

愛の炎が消せなくて カレン・ローズ

 昔は好きな作家だったけど最近あまり読んでなかったカレン・ローズ。久しぶりに読んだらやっぱり面白い。このヒーローって「復讐の瞳」でヒロインに片想いしてた人なのね。読んでいるうちに思い出したわ。「復讐の~」でも哀れっぽい役どころだったけど、今作でも、ヒロインを想いながらもなかなか行動に出られず、恋愛においては臆病なところのある優男だった。消防士で颯爽と炎に飛び込んでいく勇敢さとのギャップが良いわ。ヒロインも刑事だけど、婚約者に捨てられた経験からこれまた恋愛には臆病で、ヒーローとの関係にも慎重になっている。2人は2年半前に出会って関係を持ったらしいけど、その時に何かがあったようで、ヒロインはそれっきりヒーローとは連絡を断っていて、ヒーローのほうは、その夜、酒に酔っていたから記憶が定かじゃなくて、自分はヒロインを怒らせるような何をしたんだろうと悩んでいる。そんな2人が放火事件で再会するんだけど、お互いに意識しまくりでカワイイわね。ヒロインも有能な刑事なのに、ヒーローに見とれてしまって赤面したり。シェリー・コレールの、そこまでロマンティックでもないサスペンスを2冊続けて読んだ後にこれを読んだので、何だかと~ってもロマンティックなサスペンスに思えるわ。カレン・ローズは、サスペンスもきっちり書く作家で、犯罪捜査の過程もかなり細かく書いているんだけど、RITA賞とるだけあって、ロマンスもなかなか素敵。

 それにしても、2年半前の出来事を、やけにもったいぶって秘密めかして書いているから何なのかと思ったら、意外に陳腐な話で笑った。まあ、ヒロインにとっては笑いごとではないし傷つくのも当然で、ヒーローもアンポンタンなことをしたものよね。ハンサムなのに女性との関係には不器用で、墓穴を掘りまくってるのが面白い。ヒロインに許してもらえて良かったわね。残虐な事件の捜査の合間に、こういうまさしく恋に悩める男女のエピソードが入ってるところはやっぱりロマンス小説。そこが良いんだけど。

 事件に関してはネタバレになるので細かいことは書かないけど、複雑な事件が、少しずつパズルを組み立てるように解明されていく様子をうまく書いている。鑑識から検死官から検察まで、みんなで一丸となって捜査にあたるチームワークが素晴らしい。これぞ犯罪捜査の理想形という感じ。毎回全員でミーティングをして進捗状況を報告し合い、上司が仕事を割り振って・・というルーティンまで細かく書いているから、読んでて退屈しそうなものだけど、そういうことはなく、テンポ良く捜査が進んでいくからむしろ爽快で、それがこの作者のすごいところだと思う。800頁越えのかなりの長編だったけど、あまり長さを感じなかった。 

 カレン・ローズの作品はどれも少しづつ登場人物につながりがあって、基本、全部が関連作だけど、今作と特に関連の深そうな、ヒロインの姉が主人公の“Count to Ten"と、ヒロインのトラウマの原因となった事件を描いた前作“I Can See You”が翻訳されていないのが残念だな。

愛の炎が消せなくて (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション(ロマンス・コレクション))

愛の炎が消せなくて (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション(ロマンス・コレクション))

  • 作者: カレン・ローズ,辻早苗
  • 出版社/メーカー: 二見書房
  • 発売日: 2015/11/24
  • メディア: 文庫
Silent Scream (The Minneapolis Series Book 2) (English Edition)

Silent Scream (The Minneapolis Series Book 2) (English Edition)

  • 作者: Karen Rose
  • 出版社/メーカー: Headline
  • 発売日: 2010/05/13
  • メディア: Kindle

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