ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

忘れえぬキスを重ねて ジュリー・アン・ロング

 久しぶりのジュリー・アン・ロング。この作者は、以前ソフトバンク文庫から出ていたのを2冊くらい読んだけど、かなり前なので細かい内容は忘れてしまった。ソフトバンク文庫のヒストリカル・ロマンスはイマイチなのが多かったけど、その中ではジュリー・アン・ロングは面白いほうだったと思う。(一番良かったのはシェリー・トマスで、その次くらいかな・・)

 今作は原書が2019年刊行の最新シリーズThe Palace of Roguesの1作目。そこまで期待せずに読んでみたけど、思いの外とても良かった。この作者、こんなに上手かったっけ?さりげないユーモアが楽しくて、ロマンスは甘く切なく、ちょっとした捕り物劇も盛り込まれたよく出来たストーリーで、かなり面白かった。

 伯爵の夫が借金を残して亡くなり、困窮した未亡人のヒロインは、唯一残された波止場近くの建物を改装して下宿屋を始める。夫の愛人だった女性との間に仲間意識が芽生えて友人同士になり、下宿屋を共同経営することになって、喧嘩しながらも友情を深めていくのが良かった。ヒロインはとても素敵な女性で好感の持てるキャラクター。穏やかで優しいけれど芯は強く、ヒーローが惚れ込んだのも納得。

 ヒーローは貧しい生い立ちなのに海軍の艦長にまでなった逞しい男性で、密輸団を摘発する仕事をしていてヒロインの夫の関与を疑い、下宿屋にやってきて彼女と出会う。屈強な軍人だけどヒロインには優しくて、彼女に笑顔を向けられただけでデレデレになっているのが何だか可愛い。彼女が好きでたまらない気持ちが溢れ出ているメロメロヒーローだった。

 心理描写が細やかで、仕事一筋で恋には不器用なヒーローが自分の気持ちに戸惑う様子がよく伝わってきたし、ヒロインが、彼の仕事のせいで誤解して、裏切られたと思ってショックを受けた時には思わず感情移入してしまった。あまりにも傷ついたせいで、彼を傷つけ返すために辛辣な一言を投げつけてしまうところなんかもヒロインの心の揺れをリアルに描写していて上手いと思った。この作者を見直したわ。

 脇役も面白い人ばかりで、おっちょこちょいな待女や風変わりな下宿人たちが良い味を出している。未亡人が愛人を作る話だというから艶っぽい大人のロマンスかと思ったけど、素直で可愛らしいヒロインと無骨なヒーローの、微笑ましいロマンスだった。最後に次作のヒーローと思われる人物が顔を出していたけど、2作目も面白そう。

忘れえぬキスを重ねて (海外文庫)

忘れえぬキスを重ねて (海外文庫)

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