目新しさはないけれど、よく出来たストーリーで読みやすい正統派のロマサス。ヒロインは子供の頃、目の前で姉が誘拐されたのに助けられなかった経験から、FBIのプロファイラーになり誘拐事件の捜査に身を捧げている。ヒーローは海軍のSEAL隊員だけど、保安官をしている父親が病気になり、休暇で故郷に戻って父親の仕事を手伝っている。ある日、地元で医師をしている彼の姉が誘拐されFBI捜査官のヒロインに協力を仰ぐことに。
2人は1年前、事件の捜査の際に知り合い、お互いに惹かれあって関係を持ち、その後も遠距離恋愛を続けていて週末にはいつも電話で話をしている仲なので「かつて愛した人」というタイトルは何か違うような気がする・・。知り合った際に2人が急速に惹かれあった経緯は簡単に説明されているだけなので、せっかくならそこのところをもっと詳しく書いてくれたら良かったのにと思うのは私だけかしら。
作者はよほど意気込んでいたのか、書きたいことを全部詰め込んだような盛り沢山なストーリーで、ロマンスと誘拐事件の捜査を軸に、ヒロインと姉の幼少期の思い出に、両親との確執、ヒーローの祖母はアルツハイマーで、姉は何やら家同士の確執がある一族の男性とワケアリの関係みたいだし、元軍人でPTSDを患っていて時々錯乱する友人もいて、これだけの内容をよくまとめたなと思う。それだけで1つの物語になりそうなエピソードがてんこ盛りなので、もう少し的を絞っても良かった気はするけど。
ロマンスはヒロインを支えるヒーローの優しさが素敵だった。2人とも好感の持てるキャラクターで、一緒に捜査をしている間もお互いを思いやっているのが伝わってきて良い感じだったけど、強烈な個性はなくどちらかというと紋切り型のキャラクターなので、クセがないぶんやや印象が薄いかもしれない。ヒーローがSEAL隊員である必然性はあまりない気がするけど、無駄にハイスペックなのはロマサスあるある(笑)。
ヒーローの姉の誘拐はどこかでヒロインの姉の事件と関連しているんだろうとは思っていたけど、予想もしない繋がりがあって驚いた。恐ろしい事件のわりにはそこまでの恐怖感はなく、少し生ぬるく感じられるところはあったけど、ロマサスにしてはサスペンスもかなり頑張ってて面白かった。
かつて愛した人 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション(ロマンス・コレクション))
- 作者:ロビン・ペリーニ
- 発売日: 2020/01/21
- メディア: 文庫