ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

堕天使の娘は冬の庭で リサ・クレイパス

 レイヴネル家シリーズ5作目だけど、Ravenels meets the Wallflowers ということで、壁の花シリーズの懐かしい面子が登場していて、長年のファンへのボーナス的なエピソードを盛り込んだ遊び心の詰まったストーリー。

 ヒロインは壁の花シリーズのエヴィとセバスチャンの娘で、愛する夫を亡くし2人の幼い息子を育てている未亡人。ヒーローはレイヴネル家の次男。若い頃は放蕩者でかなりオイタをしていたそうだけど、今は真面目に兄の領地の管理を手伝っている。前作は実在の女性医師をモデルにした力作だったけど、今作はファンサービスに徹して“萌え”を詰め込んだような楽しいロマンスだった。落とした本を拾おうとしてお互いの唇がぶつかっちゃうとか、少女漫画みたいで笑ってしまったわ。ヒーローがシャツを脱いで上半身裸の時にちょうどタイミング良くヒロインが部屋に入ってきたりするのはロマンス小説あるあるだけど、ヒストリカルで一番人気のクレイパスだけあり、魅力的な男性を書くことにおいては突出した筆力を発揮していて、ヒーローの筋肉美の描写もハンパない。ヒロインじゃなくても目が釘付けになっちゃうわ。

 ヒーローは学校時代に、彼女の病気がちの元夫をいじめていたらしく、ヒロインはずっと彼に悪い感情を抱いていたけれど、思いやりのある立派な大人になったヒーローに会って、元夫の敵だったにもかかわらず惹かれてしまう。ヒーローのほうはほとんど一目惚れで彼女にぞっこん。こんな歯の浮くようなセリフをカッコよく決められるのはクレイパスのヒーローくらいのものでしょ。流石は元放蕩者。参りました。

 敢えて難癖をつけるとしたら、ヒーローが昔の放蕩ぶりを気に病んで、自分は彼女にふさわしくないと苦悩して妙に後ろ向きなところかな。周りのみんなにも好きならアタックしろとハッパをかけられているし、今は改心して真面目にやっているんだからそこまで気にすることないと思うのだけど、思い込みで悲劇のヒーローになりきって自滅していて、ちょっと芝居がかった感じ。まあ、ヒロインのことを諦めきれずにボロボロになってるとこが可愛かったりするんだけど。

 この作者のヒーローらしく苦悩してても手は早く、ヒロインも未亡人だから結構積極的なので、お熱いシーンも盛りだくさんでサービス満点。ヒロインがヒーローの髭を剃ってあげる場面があるんだけど、髭を剃るだけなのにあれほど妖しい雰囲気で濃密な空気を醸し出せるのは凄い。この作者はそういうところは本当に上手いよねえ。

 作者お得意の改心した放蕩者のロマンスを満喫できて満足。もちろんヒロインも素敵な女性だし、農業の近代化を進めるためのヒーローの取り組みとか、そういうところもきちんと書かれていて隙が無いストーリーはベテラン作家ならでは。ヒロインの父親がなかなかの存在感を発揮していたのもファンにとっては嬉しいオマケだと思う。やはりクレイパスは期待を裏切らない!次作も楽しみだなあ。

堕天使の娘は冬の庭で (ライムブックス)

堕天使の娘は冬の庭で (ライムブックス)

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