ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

悲しみにさよならを シャロン・サラ

 シャロン・サラはこれまでに10冊くらい読んだけど、今作はこの作者にしてはいまひとつじゃないかな。サラッと読めるけど全体的に薄いというか。重すぎるのは嫌だという人には良いかもしれないけど、この作者は、辛い!苦しい!人生詰んだ!みたいな重苦しい話でこそ本領を発揮するように思う。人気のある作家だから、この作品もそこそこ好評を得ているのだろうけど、褒めるばかりじゃ能がないので気になる部分を指摘してみる。

 ヒロインは確かにガッツのある女性で、大変な困難を乗り越えて偉いと思うけど、何だか全てが上手くいきすぎで少し安易な気がする。女子高生のヒロインが一人で穴を掘って兄の死体を埋めたのは恐ろしい経験だけど、苦労話はそこまでで、町を出た後は素敵な男性に見初められて結婚し、夫が亡くなった後は彼の会社を引き継いで今では立派な女実業家というのはちょっと話が出来すぎのような。

 ヒーローはヒロインの亡くなった夫の親友で、夫の建築会社を引き継いだヒロインを助けている。実は出会った時から彼女のことが好きだったのに親友に譲って、二人が結婚した後も密かに彼女を愛し続けていたらしい。このヒーロー、好きな彼女が親友と結婚しても、二人を温かく見守り続けるなんてすごい聖人だよねぇ。もっと複雑な感情を抱いて葛藤するのが普通だと思うけど、そういうことは書かれていなくて、ただただ彼女に献身的に尽くしているというのが何だか解せない。この作者は信仰に篤い人で、"汝、友人を妬むなかれ"ってことなんだろうけど、もっと嫉妬に苦しんだり、生々しい感情が書かれていたなら読み応えのあるロマンスになっただろうに、このヒーローの穏やかすぎる愛にはあまり心を揺さぶられるところもなく、何だか綺麗事のように感じられる。

 サスペンスに関しても、ヒロインは10年前に兄を殺した犯人を突き止めるために故郷に戻って来るのだけれど、みんなが彼女に同情して味方になって、警察も協力的で全面的に彼女を信頼し、真犯人を見つけるために署長が自ら奔走するというのはあまり現実的じゃないと思う。ヒロインも、自分の身を守るためとは言え、兄の死体を隠蔽したりしているのに、彼女に不利なことは一切なくて何だか不自然に思えた。ここでもまた、"汝の隣人を愛せよ"的な作者の宗教観が強く出ている気がして心温まるエピソードが若干押し付けがましく感じられた。犯人が間抜けすぎなのもイマイチだし、自分の苦手なこの作者のスピリチュアルな部分が少々煩わしく感じられる内容だった。

 綺麗にまとまっていて読みやすく、悪くはないのだけど、ロマンスはあっさり目だし、かと言ってミステリーが特別面白いというわけでもないので、どちらかというと印象の薄い作品だと思う。

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