ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

死後開封のこと リアーン・モリアーティ

 L・モリアーティはオーストラリアの作家だけどアメリカでも大人気で「Big Little Lies」がニコール・キッドマン主演でドラマ化されている。(見てないけど・・)「死後開封のこと」は、この作者が「ささやかで小さな嘘」の前に書いた出世作。読んでみると、映像化を前提に書いているのかと思うくらい、そのままドラマの脚本にできそうなストーリー構成で、メインキャラクターが複数いて、次々に場面転換して別のキャラクターのエピソードに切り替えながらストーリーが進行するという、まるでドラマを見ているような感覚の小説だった。

 内容は、"デスパレートな妻たち"(例えが古いかな?)みたいな感じで、それぞれに深刻な事情を抱えた女性たちの必死の行動を描いていて、うわっ、これはきっついと怯んでしまうくらいの痛烈な皮肉が込められている。夫婦の問題や家族関係についてのエピソードは、子供のいる女性が読んだらたぶん共感できるんじゃないかと思う。

 主要キャラの3人の女性にそれぞれの物語があるのだけれど、メインは、夫が書いた「僕が死んだら開封してほしい」という手紙を偶然見つけた妻が、その手紙を読んでしまったために、夫のとんでもない事実を知って窮地に陥る話で、苦境に立たされたヒロインの葛藤と重圧が半端なく、罪悪感を抱えて生きることの辛さを克明に描いていて、なかなか刺さるストーリーだった。この作者は人間の行動に関する洞察力がかなり鋭くて、別のキャラクターで、夫が自分の従妹と浮気してショックを受ける女性の話も面白かった。この女性と従妹の関係というのが非常に複雑で興味深く、単純な浮気とは少し違う。当事者それぞれの行動の裏にある心理を深く掘り下げていて色々と考えさせられた。メロドラマ風のストーリーに痛烈な風刺をきかせて、少しだけミステリーを足したような内容で、キャラクターの造形がユニークで上手い。ベストセラーを連発しているだけあって面白い作家だと思う。 

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