ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

ステイ・クロース ハーラン・コーベン

 ハーラン・コーベンはベストセラーリストの常連で、ここ数年で立て続けに4作( イノセント その森に  ザ・ストレンジャー SAFE 埋もれた秘密 )がNetflixでドラマ化されている超売れっ子のミステリー作家。以前から読もうと思いながら積読本になっていたのをやっと読んだ。

 この作者は最近は小学館が翻訳を刊行しているけど、「ステイ・クロース」はヴィレッジブックスが2013年に出した少し前の作品。良く出来たミステリーでありながら、人間ドラマとしても読み応えがあり、人生の悲哀を感じさせるストーリーが良かった。

 登場人物が多めで、事件を追う男性刑事に加え、元ストリッパーの女性とカメラマンの男性も主役と言えると思う。事件によって引き裂かれてしまった恋人たちの、明暗の分かれるその後の人生をミステリーに絡めながら書いているところが上手い。元ストリッパーの女性が事件後新しい人生を築き、愛する夫と可愛い子供のいる郊外の主婦になっているのに対し、元報道カメラマンの男性は恋人に去られて立ち直れず、今では酒に溺れパパラッチもどきに身を落としているのが不憫すぎて泣ける。愛する女性のためにあれほどのことをしたのに・・と思うと同情を禁じ得ない。出てくる男性キャラクターの多くが別れた恋人や離婚した妻に未練があり未だに傷心を抱えていることから、ストーリーの根底に、女性は案外タフだけど男性は意外と脆いんだよという作者の主張が込められているような気がする。

 ミステリーは地味ながら面白く、真犯人には驚かされたし、捉えどころのない不気味な殺し屋のカップルが捜査を攪乱するのにハラハラさせられた。個性的で印象に残るキャラクターが多く、単純な犯罪捜査ものではなく事件に関係する人達それぞれの人生のドラマを描いた深みのあるストーリーが流石で、ベストセラー作家だけのことはあると思った。

これもドラマされてNetflixで配信中

ステイ・クロース | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

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