ロマンス小説感想日記

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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

血の記憶 グレッグ・アイルズ

 グレッグ・アイルズは1つ前に記事を書いたハーラン・コーベンほどではないけど結構売れてる作家で、本国では人気があるけど翻訳は2010年に出たのを最後に刊行が止まっている。

 これは2008年に刊行された古い作品で、主人公の父親がベトナム戦争の帰還兵だったりするところに時代を感じたけれど、事件の捜査に関しては今読んでもそれほど古さを感じず面白かった。女性の歯科学者が主人公の猟奇殺人もので、幼児虐待、近親相姦、レイプ等、かなりエグい内容。中年男性が殺される連続殺人事件が起き、死体が噛まれていて歯形が残っていたことから、彼女が捜査に協力することに。ヒロインは幼少期に父親が何者かに殺害されるのを目撃したけれど、その記憶を失くしている。その恐ろしい経験のせいか精神を少々病んでいて、躁鬱の傾向があり、アルコールが手放せず、妻子持ちの年上の男性とばかり関係を持っているという。今も一緒に事件の捜査をしている男性刑事と不倫していて、避妊用のピルを飲んでいたけれど、抗生物質を服用した際にピルの効果が薄れて妊娠してしまった。男性のほうも割と本気みたいで彼女のために妻と子供を捨てると言い出し、ロマンス小説か!?と思うような展開だったけど、やはりそう簡単にはいかなかった。タフなヒロインではあるけれど、かなり極端なキャラで、ちょっと共感はしづらいかも。彼女を丸ごと受け入れてくれる優しい男性が現れたのは良かったけど、あの男性刑事は結局、悪い人ではないけど良い人でもなく中途半端で残念なキャラクターだったな。

 特別目新しいところはなく、この手の猟奇系サイコスリラーによくあるネタを詰め込んだような感じだけど、定番のネタをうまく調理していて、緊張感のある展開でどんどん読ませるところは上手い。事件の捜査が進むにつれ、ヒロインの過去が明らかになってきて、彼女自身も事件に巻き込まれていく展開が良く出来ていた。割と想定内の結末で、そこまですごいどんでん返しはなかったけれど、ストーリーの完成度は高く、上下巻でかなりのボリュームなのにあまり長さを感じることなく読めて良かったと思う。 

血の記憶(上) (講談社文庫)

血の記憶(上) (講談社文庫)

血の記憶(下) (講談社文庫)

血の記憶(下) (講談社文庫)

 

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