アメリカのYA小説を読んでいると、精神疾患を抱えた高校生がやたらと出てくるのだけど、みんなそんなに病んでるんだろうか。この作品の主人公は強迫性障害を患う女子高生で、いつも細菌に感染することを恐れていて、そのことを考え出すと止まらない。感染に怯える彼女の思考が怖いくらいにリアルで真に迫っていたけど、どうやら作者自身も同じ病を患っているらしい。なるほど、だからこんな話を書いたのか。
こんな風に哲学者みたいに考え、詩人みたいに話す高校生がいるのか?!というツッコミはさておき、強迫性障害に苦しみながらも、友達との関係を築き、恋をするヒロインがとても良かった。あらすじから、失踪した大富豪を探す冒険的な話かと思ったけど、ちょっと予想と違った。ストーリーよりもキャラクターがメインの小説で、強迫性障害を抱えていること自体、毎日が冒険のようなものだから、そんなヒロインの思考と行動を綴るだけで物語になってしまうのよね。
シェイクスピアをはじめ多くの文学作品が引用されていたり、ヒロインの内省的な思考が哲学者みたいだったりして、YA小説にしては深すぎるという気もしたけど、ヒロインと親友とのガールズトークには笑わせられたし、ボーイフレンドとのロマンティックな会話も素敵で、暗くなりすぎずに楽しく読める絶妙な匙加減のストーリーが上手いと思った。YA小説で一番人気のベストセラー作家だけあって、読みやすいのに奥が深く、大人が読んでも面白いと思う。