K・スローターの最新作。この作者の既刊は「プリティ・ガール」と「グッド・ドーター」しか読んでいないけど、本作はそれらよりもストーリーが自分の好みに合っていて、これまでで一番気に入った。3作とも性格の違う姉妹の確執がテーマの一部にあり、内容的には似通ったところがあるものの、前に読んだ2作は登場人物にそこまで共感できなかったのだけれど、これは主役のリーとキャリーの姉妹愛がとても感動的で泣けた。
貧しい家庭で飲んだくれの母親に育てられた気の毒な姉妹の人生が描かれ、姉のリーは必死で学費を貯めて大学へ行き弁護士になったけれど、妹のキャリーは不幸が重なり麻薬依存症に。対照的な2人のストーリーは読み応えがあり人間ドラマとしても秀逸。リーがレイプ事件の被告の弁護を担当することになり、姉妹が20年以上前に葬ったはずの過去が蘇り、二人は窮地に陥っていく。あらすじを読んだ時から一体どんな過去なんだろうと気になっていたけど、本当にとんでもなく恐ろしい過去だった!これは絶対に掘り起こされないように深く埋めておかないといけないわね。比喩的にも、文字通りの意味でも・・。少女の頃からこれほど重い秘密を抱えて生きてきたなんて辛すぎる。
弁護士としてステータスを築き、愛する夫と娘がいて、依存症の妹の面倒も見ているリーはしっかり者のようでいて、意外と脆いところがあり、追い詰められてボロボロになりながらも愛する者たちのために必死で戦う彼女に感情移入せずにいられない。頑張って底辺から這い上がり良い人生を手に入れたのに、自分はそれにふさわしくないと思い込んで台無しにしてしまう傾向のある姉に幸せになってほしいと願うキャリーの命がけの行動がまた泣ける。リーの夫も優しい人で、夫婦二人とも娘のことを大切に思っていて、根底に愛があるからこそ、サスペンスがより引き立つのだと思う。凄惨なだけではない深みのあるストーリーが素晴らしい。本当に良い話だったわ~。
コロナ禍の状況を一早く書いていることも凄いと思った。小説を1作書くのに1年以上はかかるだろうから、書いている間にも状況が変化していただろうし、出版されるときにどんな状況になっているか予想もつかないのに、最新の社会情勢を取り入れているところがチャレンジャーだなと思う。パンデミックを扱った小説はちらほら見かけるけど、齟齬があるといけないから架空の設定にしているものが多いと思う。