ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

欺きの仮面 サンドラ・ブラウン

 連続殺人犯を追うFBI捜査官のドレックスが、遂に犯人と思われる男を発見すると、彼は結婚していて、若く美しい妻がいた。彼女は共犯者なのか、それとも殺人犯の次の犠牲者なのか・・・というストーリー。

 凶悪な殺人鬼を捕えることに執念を燃やすヒーローはなかなか素敵で良かったけど、ヒロインの魅力がちょっと薄いかなあ。30近く歳上の殺人鬼の夫と結婚しているというのがどうも引っかかる。S・ブラウンのロマサスのヒロインは美人で賢いハイスペックな女性が多いけど、本作のヒロインのタリアは聡明さがあまり感じられなかった。

 ヒーローと殺人犯の対決は、どちらも抜け目がなく互角の戦いで読み応えがあった。ヒーローを助ける仲間の捜査官たちとの友情にグッときたし、足を引っ張る無能な上司を出し抜くのが爽快で良かったけど、ヒロインの存在がうまくストーリーにはまっていない気がするのよね。ヒーローが殺人犯の妻に恋するという設定は面白いと思うけど、彼女が夫に虐待されているとか、ものすごく怯えているというわけでもなく、中途半端な状況で、ロマンスがいまひとつしっくりこなかった。

 ヒロインからあまり危機感が伝わってこなくて共感しづらかったけど、そのぶんヒーローの存在感が強く、彼の物語として読むぶんには面白かった。ただ、最後の彼に関するサプライズはちょっと無理があった。あのどんでん返しは蛇足だと思う。ヒロインが命を助けてもらっておきながら、騙されたと怒っているのも何だかなあと思ったし。終盤の展開が不自然で、この作者比ではやや詰めが甘い気がするけど、650頁を最後まで退屈することなく読ませるだけのものはあった。S・ブラウンなので期待値が高いぶん、粗が気になってしまったけど、クオリティの高いサスペンスを楽しめる良く出来たロマサスだと思う。

欺きの仮面 (集英社文庫)

欺きの仮面 (集英社文庫)

Outfox (English Edition)

Outfox (English Edition)

  • Brown, Sandra
  • Grand Central Publishing