ロマンス小説感想日記

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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

愛の妖精にくちづけて リサ・クレイパス

 The Raveneles シリーズの7作目だけど、レイヴネル家の面々はあまり登場せず、壁の花シリーズの第二世代のストーリーになっている。ヒロインはウェストクリフ伯爵とリリアン(「恋の香りは秋風にのって」のカップル)の長女メリットで、海運会社を所有していた夫を亡くし、会社を引き継いで経営に奮闘している未亡人という設定。ヒーローはスコットランドウイスキー製造業者で、自社のウイスキーをイギリスに運搬するのにヒロインの会社を利用したことで彼女と出会う。以下、多少のネタバレあり。

 リサ・クレイパスはここ数年、年末に刊行される年に一度のお楽しみになっているけれど、期待を裏切らない面白さで一年待つ甲斐があるというものだわね。ストーリー自体は特別凄いわけではないけれど、細かいところまで良く出来ていて完成度が高い。ヒーローが凄く素敵で、スコットランドの無骨な大男だけど、髭を剃ったら超絶美男子!とか、ちょっとしたところがロマンス読者のツボを押さえていて上手いのよね。スコットランドからイギリスへやって来た途端に命を狙われ、記憶を亡くしたり、飽きさせない展開で面白かった。ロマンス小説の登場人物はやたらと記憶を亡くしたり、なぜか都合の良いタイミングで思い出したりしてツッコミを入れたくなることが多いけど、これは思い出すきっかけなんかも良く考えられていて、細かいところが流石クレイパスという感じ。ヒロインもしっかり者の長女で、未亡人だから意外と積極的(!)だったりするけど、とても可愛らしくてヒーローが夢中になるのも納得。最後はやけにあっさり問題が片付いてしまった気がしないでもないし、(不妊だと思っていたヒロインが子宝に恵まれるという) 定番すぎる結末とは言え、これぞロマンス小説という満足の一作だった。壁の花シリーズの懐かしいキャラクターたちも登場して、ファンなら大いに楽しめること間違いなし。

 

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