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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

レイトショー マイクル・コナリー

The Late Show (English Edition)

The Late Show

  • Connelly, Michael
  • Little, Brown and Company

 

 女性刑事が主役ということだけど、この作者は男性が主人公のシリーズが多く、女性キャラの描写はイマイチな気がしたので、どうかなあと思いつつ読んでみた。

 レネイ・バラードはハワイ出身のポリネシアン系(?)で、サーフィンが趣味、祖母の家を住所にしているけれど、普段はテントで寝たり、ホテルに宿泊したり、警察署の仮眠室で寝たりと、家を持たずに放浪者のような生活をしている一風変わった女性。作者が個性を出そうと頑張りすぎて掴みどころのないキャラクターになってしまったようで、最初はちょっと魅力が薄く感じたけど、読み進むにつれてなかなかカッコいいと思えるように。

 セクハラで上司を告発したけれど、現場を目撃したにもかかわらずパートナーが味方してくれなかったために認められず、左遷されて深夜勤務になってしまったという設定は良いわね。(Me Too小説が流行っていることだし。)男性優位の職場で奮闘する姿に女性の読者はきっと共感すると思う。重要な事件をなかなか担当させてもらえない気の毒な状況で、できるだけ捜査に関わろうと機転をきかせる彼女の行動力が凄い。過失をでっちあげて彼女を厄介払いしようとする上層部の策略の裏をかき、相手の警部を窮地に追い込んだりするのが爽快だった。銃撃事件の顛末も興味深く、捜査の行方が気になって後半は一気読み。危険な状況に陥っても冷静に対処し切り抜けるレネイが有能すぎてもう少し欠点があってもいいような気はするけど、最後まで予断を許さないストーリーでとても面白かった。

 

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 翻訳について一言。作中、レネイが会話を録音していることに気づいて指摘した捜査官に、彼女が録音を止めて「これで幸せ?」と言うのだけれど、この文脈だと「幸せ」と訳すより「これで満足?」と言ったほうが自然だと思うのよね。おそらく"happy"を機械的に"幸せ"と訳してるんだと思うけど、翻訳小説で似たような例をちょくちょく見かけるので気になるわ。誤訳とは言わないけど日本語としてやや不自然だと思う。M・コナリーの作品を手掛けているこの訳者さんは全体的に文章がちょっと雑じゃないかしら。

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