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海外ミステリーとロマンス小説のブックレビュー

あの夜のことは・・・ ジュリー・ジェームズ

あの夜のことは・・・ (二見文庫 ジ 8-3)

あの夜のことは・・・ (二見文庫)

  • ジュリー・ジェームズ
  • 二見書房

 

 FBI/US Attorneyシリーズ3作目。主役カップルが9年前の学生時代に一度出会っているという設定は素敵で良かったけど、1~2作目のほうが好きかな。

 前2作はヒロインが危険な状況に陥ってFBI捜査官のヒーローが助けに駆け付けるというちょっとしたサスペンスがあったけど本作はそういうのが無く、代わりに検事補のヒロインのお仕事の話が書かれていて、それがイマイチなのよねぇ。私は法廷サスペンスが好きで色々読んでいるから余計にそう思うのかもしれないけど、前半の訴訟関係のエピソードが子供騙しでつまらない。それに金持ちのお坊ちゃんのヒーローが刑務所に入れられたら、相当メンタルやられて悪夢にうなされてもおかしくないのに、全然堪えてなくてあまり成長していないのも何だかなあ。ヒーローが前科者という設定は軽いラブコメが持ち味の作家が扱うにはあまりふさわしくない気がするわ。有罪で前科持ちというのは実際かなり深刻なことなのに、ヒーローが軽すぎるよ・・。ヒロインも「信じられないほどハンサム」とか「素敵な青い瞳」とか容姿ばかりを褒めていて、イケメンなのは良いことだけど、それ以上の魅力があまり感じられなかったのがちょっと残念。

 前半はイマイチだったけど、後半はヒロインの元カレが出てきたりして面白くなり巻き返したかな。ヒーローの家族の絆のエピソードも良かったし。会社を設立する話はちょっと都合良すぎだけど、まあ上手くまとめたとは思う。(これ、Twitter社のCEOがイーロン・マスクだったら面白かったのにね。原書が2012年刊行で一昔前だから色々古いのよねぇ。ヒーローがLOSTのソーヤー似というネタも時代を感じるわ。)あまり細かいことに拘らなければ普通に面白いラブコメで、作者が脚本家志望なだけあってセリフが軽妙でヒロインと友人のガールズトークも楽しかった。自分の好みではなかっただけで、前作、前々作より劣っているわけではないので、この作者のファンの方は読んで損はないかと。

 

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 こんな指摘をするのは無粋かもしれないけど敢えて書かせてもらうと、そもそもTwitterをハッキングして停止させたヒーローが有罪になって刑務所に入ってたという設定自体がどうだろう。これくらいの案件で普通は刑務所入らないでしょう。仮に有罪になったとしても執行猶予付きだと思う。それに万一刑務所に入るとしてもホワイトカラーの犯罪者向けの警備の軽い刑務所だろうから、重罪犯がいて殺人が起きるようなところに行かないって。金持ちで有能な弁護士をいっぱいつけているなら尚更。公選弁護人でももっとマシな仕事するよ。これはむしろ刑事というより民事でツィッター社から訴えられて多額の賠償金を支払わされる案件だと思うわ。