ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

カッコウの呼び声 ロバート・ガルブレイス

 

 私立探偵コーモラン・ストライク シリーズ1作目。ハリー・ポッターのJ.K.ローリングが別名で書いたミステリー。(最初はJ.K.ローリングだということを隠して出版したけど結局バレてしまったらしい。)大物作家の話題作だから版権料が高かったんだろうけど、単行本上下巻だと買う人が少なそうだから、文庫化すればいいのに。面白いのにもったいない。

 ペンネームを男性名にしているから硬派なミステリーかと思いきや、意外とユーモラスで読みやすく、皮肉っぽいけど人間味のある主人公のコーモランがすっかり気に入ってしまった。派遣会社からやって来た臨時の秘書のロビンが超有能で、調査に素晴らしい能力を発揮してボスを助けるのも良かった。コーモランのほうは、美人な秘書にセクハラだと思われないように妙に気を遣って接しているのが面白い。

 スーパーモデルが自宅の高級アパートのバルコニーから転落死し、警察は自殺だと断定したけれど、殺人だったと信じる彼女の兄からの依頼を受けて私立探偵のコーモランが捜査する。地道に関係者から話を聞いて調査するのでとにかく会話が多い。派手なアクションは無いのでそういうのが好きな人には物足りないかもしれないけれど、相手から発言を引き出し得られた情報を分析するコーモランの能力が素晴らしいし、話を聞きながら内心で皮肉なツッコミを入れているのが面白かった。怪しい奴ばかりでどいつが犯人だろうと思いながら読んでいたけど、事実が判明した時には、こいつだったのか!!と驚愕。細かいところまでよく出来たミステリーで流石。

 問題だらけのコーモランの私生活のエピソードも面白かった。ユニークなキャラクターだし、ガールフレンドとの複雑な過去も気になって興味津々で読んでいた。元軍人でアフガニスタンで負傷し片足が義足というのが凄いし、父親は有名なミュージシャンで、そのグルーピーだった母親が私生児として彼を産んだという不幸な生い立ちで、父親が母を殺したと疑っている・・ってインパクトありすぎよね。ミステリーは、謎解きが面白くてもキャラクターがイマイチだと、本筋に関係ない部分は読み飛ばしてしまったりするけど、これはキャラクターの造形もよく練られていて、主人公のことをもっと知りたいと思わせるのが上手い。原書は現在6作目まで出ていて、色々な年間ランキングで毎年上位に入っている評価の高いシリーズだけど、翻訳は2作出ているだけなのね。

↑ドラマ化されています。

 

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