ルーカス・ダヴェンポート シリーズ1作目。原書は32作目まで刊行されていてる息の長いシリーズで、今でも新作が出るたびにベストセラーになっている。マイクル・コナリーのハリー・ボッシュ シリーズよりも長く続いてるのよね。作者のジョン・サンドフォードは作家になる前は記者をしていてピューリッツァー賞も受賞しているそうで、経歴もコナリーと似てるのね。
1989年の作品なので今読むと古く感じる部分もあるけど、キャラクターの描き方もストーリーの盛り上げ方も上手くて面白かった。主役のルーカスがとにかくユニークなのよね。警部補だけど、副業のゲーム製作でたんまり稼いでポルシェを乗り回しているお金持ちで、女たらしで美人に弱いとか、バブリーな設定が80年代っぽい。ミステリーはハードボイルドな主人公が多いから、こういうチャラ男はなかなか新鮮だわ。テレビのレポーターをしているガールフレンドがいるけど、それが特ダネのためなら恋人も利用するとんでもない女性だったり、脇役もなかなか個性的。作者が元記者だからか、事件に群がるマスコミの描写がリアルで、報道のせいで捜査に支障が出たりするのが腹立たしかった。警察と犯人の攻防にハラハラさせられ、犯人を取り逃がした時には絶望する警官たちに感情移入してしまった。かなり残忍な連続殺人事件だけど、犯人の視点での描写も興味深く、警察を出し抜く手際に感心させられたりして面白かった。
長く続いているシリーズだからルーカスのキャラも時代に合わせて変わっていったりするのか興味あるわ。(女好きはわかるけど、二股かけるのはマズいでしょう。捜査も手順を無視して違法なこともしてたし・・。)10作目までは翻訳が出ているので、もう1冊くらい読んでみるかな。
ちなみにルーカスの娘(養女)のLetty Davemportが主役の新シリーズの1作目が昨年アメリカで刊行されて、そちらも好評らしい。今年2作目が刊行予定になっている。
10作目のCertain Preyがマーク・ハーモン主演で2011年にTVムービーになっていた。
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また翻訳にイチャモンつけてると思われそうだけど、何しろ長年にわたって大量の翻訳小説を読んでいるし、昔語学系の仕事をしていたこともあって、細かいことが気になってしまい指摘せずにいられないのよね・・。
翻訳小説で、男性が「スポーツコート(又はスポーツジャケット)」を着ているという記述をよく目にするんだけど、(本作でも出てきた。)昔、それがどういう服なのか気になって調べてみたことがあるのよ。そうしたら想像していたのと全然違ったのよね。スポーツコートだからジャンパーやブルゾンのようなカジュアルな上着かと思ったら、スーツの上着みたいなものだった。
基本的に濃い目の色の無地でよりフォーマルなものをブレザーと言い、柄が入っていたりするのがスポーツコートらしい。でも日本人はこういう上着をスポーツコートとは言わないよねぇ。それで思ったのよ、これは翻訳した人もスポーツコートが何なのかわかってなくてそのままカタカナにしたんだなと。
それから、小説でスポーツコートやスポーツジャケットという単語が出てくると、またわかってない翻訳者がそのままカタカナにしてる・・と思うようになった。昔ならともかく今はちょっとググれば簡単にわかるんだから、翻訳者は手抜きをせずちゃんと調べて日本人にわかるように訳しなさいよと思う。最近の小説でも割とよく目にするのよ。
↑アメリカの紳士服メーカーのサイトにわかりやすい説明があった。