ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

オーファンX 反逆の暗殺者 グレッグ・ハーウィッツ

Orphan X: A Novel (English Edition)

Orphan X: A Novel

  • Hurwitz, Gregg
  • Minotaur Books

 

 翻訳は1作しか出ていないけれど、原書は8作目まで刊行されていて、本国ではグレイマンと並ぶ人気シリーズらしい。

 素質のある孤児を選抜して訓練し、暗殺者を養成するオーファン・プログラムなるものが政府によって秘密裏に行われていて、主人公のエヴァンは子供の頃にそこで才能を見出され、厳しいトレーニングを受けて暗殺者となり、オーファンXというコードネームでミッションを遂行していた。政府の暗殺の仕事を辞めた今は、フリーランスで悪者に虐げられている人たちを助けているけれど、ある依頼がきっかけで命を狙われるようになり・・というストーリー。

 全体的にマンガちっくでマーベルのヒーローものみたいだなと思ったら、この作者はアメコミの原案も数多く手掛けているそうで、大いに納得がいったわ。この手の小説はたいていそうだけど、主人公がとにかく超人的で、何でも出来ちゃうし、普通死ぬだろって場面でも絶対死なないし、面白いけどツッコミどころは色々ある。敵との対決もアクション重視の肉弾戦という感じなので、もう少し頭脳戦ぽいほうが好みかなぁ。設定はインパクトがあり、わかりやすく読みやすいストーリーで悪くはないけど、もう一捻りあると良かった。

 それでもエヴァンのキャラクターはとても気に入った。訓練を監督してくれたハンドラーが良い人で、人間性を失わないように教育してくれたお陰で、罪のない人は死なせない、良心のある暗殺者になって、弱者を助けずにいられない優しさを持っているのよ。武術の達人でとんでもなく強いのに、業務用清掃用品の輸入業者だと言って人畜無害な男を装っているのが笑える。自分が命を狙われていてそれどころじゃないのに、同じマンションの住人が困っていると手を貸してあげたりする、ご近所ヒーローみたいなところも好感が持てるし、夫を亡くしたシングルマザーの検事補の女性と良い感じになって、「あなたを幸せにするものは?」と聞かれて「きみのそばかす」と答えるあたり、冷徹な殺し屋にしては恋愛のスキルもありそうで、なかなか魅力的なキャラクターだと思う。映像化に向いてそうだけど、この手のアクションものは似たようなのがいっぱいあるからねぇ。以前ブラッドリー・クーパー主演で映画化という話もあったらしいけど頓挫した模様。

 

無断転載禁止 copyright © 2018 BOOKWORM