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危険のP スー・グラフトン

P Is for Peril (Kinsey Millhone Book 16) (English Edition)

P Is for Peril (Kinsey Millhone Book 16)

  • Grafton, Sue
  • Marian Wood Books/Putnam

 

 私立探偵キンジー・ミルホーンのシリーズ16作目。タイトルがアルファベットになっている有名なシリーズだけど、これまで読んだことがなかった。80年代からずっと続いていたのに、25作目の"Y is for Yesterday”を書いた後、2017年に作者が亡くなってしまったのよね。Yで終わりだなんて本当に惜しい。(ちなみに翻訳は"R"まで。)

 2000年の作品でかなり古いため、最近のミステリーと比べるとアナログな捜査方法だけど面白かった。主人公のキンジーは36歳でバツ2の私立探偵で、超有能というわけではないけど憎めないキャラクター。高齢の元医師が失踪し、彼の元妻から行方を捜してほしいと依頼されたキンジーは、彼が働いていた養護老人施設を調査する。医療制度のからくりが興味深かった。なるほど、そういう風にズルをして儲けるのかと。失踪した医師の元妻も現在の妻も一癖ある女性だったし、登場人物は割と多めだけど、キャラクターの描き分けが上手いのか、いきなりシリーズの16作目を読んだのに全く混乱することがなかった。ところどころでクスッと笑えるさりげないユーモアも良いわ。

 失踪事件の他にも、キンジーが新しいオフィス用の物件を探している関係で出会った若いイケメンが彼女に言い寄って来て、あら、モテるわねぇと思って読んでいたら、その男がとんでもなく危険な奴だとわかり、予想外の事件に巻き込まれたりして面白かった。

 このシリーズと同じくらい古い女探偵もので、サラ・パレツキーのウォーショースキーシリーズは昔数冊読んだ(細かいことは忘れたけどキャスリン・ターナーの映画を見て気に入り、小説も読んだ覚えがある。)けど、ウォーショースキーがかなり豪快なキャラクターで派手な活躍ぶりだったのに対し、キンジー・ミルホーンは割と穏やかで普通っぽく、親近感を覚えるところが魅力かなと思った。

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