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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

ウィンター家の少女 キャロル・オコンネル

Winter House (A Mallory Novel Book 8) (English Edition)

Winter House (A Mallory Novel Book 8)

  • O'Connell, Carol
  • G.P. Putnam's Sons

 

 Kathy Mallory シリーズ8作目。主人公のマロリーはNY市警の刑事で、絶世の美女で凄腕のハッカーだけど、孤児でストリートチルドレンだった幼少期の過酷な生活のせいで感情を表に出さない氷のような女性になったという。重い過去を背負えるだけ背負ったという感じの生い立ちに、一体どんなヒロインだろうと興味を引かれて読んでみたい気になるわよね。 

 58年前に金持ち一族の屋敷で9人が殺される大量殺人が起き、その同じ屋敷で今になってまた殺人事件が起こり、一族の暗い秘密が暴かれていくというストーリーで、事件は面白いしキャラクターも魅力的だけど、語り方がイマイチなのよね。いきなりシリーズの8作目を読んだせいかもしれないけど、文章が回りくどくて慣れるまで読みにくかったし、最初は登場人物の人間関係がよくわからず、話になかなか入り込めなかった。終盤は盛り上がったけど、中盤はやや冗長だったように思う。

 マロリーのキャラクターは良かった。負けるのを恐れて起訴を渋る検事を、恐怖でチビるくらい脅しつけて無理やり起訴させる女刑事って凄すぎる。いつも無表情でソシオパス気味なところが面白い。犯人を震え上がらせるような殺気があり、逮捕せずその場で始末しちゃうんじゃないかと思ってしまったくらいで、本当に傑出したヒロインだわ。

 あとがきで解説の人が、サラ・パレツキースー・グラフトンの女探偵ものが人気になった流れで、このシリーズも翻訳されたけど、当時そこまで話題にならなかったのは、マロリーが善悪の境界線を越える新しいキャラクターだったからだと書いているけど、それは違う気がするなあ。読者は、別に同じパターンの小説ばかり求めているわけではなく、面白ければ斬新なキャラクターにも食い付くと思う。このシリーズがそこまで多くの人に支持されなかったのは単に読みにくいからじゃないかしら。これの前にちょうどスー・グラフトンを読んだばかりだけど、シリーズの途中からでも違和感なく読めたし、スッと話に入っていけて非常に読みやすかった。比べるとキャロル・オコンネルは、ヒロインは個性的だし事件自体は面白いけど、やや説明不足に感じるところがあり、リーダビリティが低めかなと。

 

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