Apple TV+でドラマ「彼が残した、最後の言葉」を見終わったので感想を。これはローラ・デイヴの原作小説がベストセラーで評価も高いので気になっていたんだけど、翻訳が発売される前にドラマの配信が始まったので見てみることに。作家がドラマの製作に関わっているので、そこまで原作とかけ離れた内容ではないだろうし期待できるかなと。
主人公のハンナが結婚したオーウェンにはベイリーという高校生の娘がいて、父親の新しい奥さんに反発している。オーウェンが勤める会社で不正があり警察が捜査している最中に彼が失踪してしまい、ハンナが夫を探すためにベイリーと協力して彼の過去を調べていると意外な事実が明らかになってくる。初めはハンナを嫌っていたベイリーが、彼女と行動を共にするうちに打ち解けて絆が深まっていき・・・というストーリー。
小説が2021年のGoodreads Choice AwardのMystery&Thriller部門を受賞しているので、きっと凄いどんでん返しがあるんだろうと思って見ていたけど、至って普通のサスペンスだった。夫の過去を探る過程は面白かったし、継母を嫌っていたベイリーがハンナに心を開いていくのにほっこりさせられたけど、結婚した夫に秘密があったというのはサスペンスでは割とよくあるパターンだし、悪くはないけど期待ほどではなかったなぁ。調べてみたらこの作家は元々女性向けフィクションを書いていて、ミステリーを書いたのはこれが初だったようで、ミステリーでも、家族ドラマの部分を重視した作品なのかなと。
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ネタバレになるけど、最終話のエピローグ的な場面で、失踪していたオーウェンが、事件の5年後にハンナの作品展にこっそりやって来て「そばにいられなくても愛してる」みたいなことをボソっと囁いて去っていくんだけど、あれだけ迷惑をかけまくって、今更「愛してる」はないわ~。娘を守ってもらうために彼女を危険にさらしておいて、本当に愛しているのかと。感動する場面なのかもしれないけど微妙な気持ちになった。思うにオーウェンを中途半端に良い人役にするのでなく、実は極悪人だったという設定にしたほうがサスペンスとしては面白かったんじゃないかしら。ハートウォーミングな女性向けフィクションを書いていた作家だから、家族愛を描きたかったのかもしれないけど、オーウェンの行動は娘第一で再婚した奥さんは二の次という感じなので、どう考えてもハンナが割りを食っていて、連れ子のいる男やもめなんかと結婚するものじゃないなと。
このドラマ、評判はどうなのかなと思ってRotten Tomatoesのレビューを見たら散々で、評価低すぎて笑った。そこまで酷くないと思うけどねぇ。でもこの系統の小説のドラマ化だったら「リトル・ファイアー~彼女たちの秘密」のほうが面白かったかな。作者のセレステ・イング (NGと書いてイングと発音) が中国系アメリカ人だから、マイノリティの視点でアメリカ社会を風刺している攻めた内容だった。これは凄いベストセラー小説なのに翻訳されていなくて、prime videoでドラマが配信されたのをだいぶ前に見た。
Apple TV+はprime videoやNetflixに比べると、加入している人が少ないかもしれないけど、最近は結構頑張っていると思う。先日見た "Ghosted" はアナ・デ・アルマスとクリス・エヴァンズ共演の笑えるスパイ映画で凄く面白かった。"グレイマン"より好きだわ。
私は見ていないけど、ドラマはレベッカ・ファーガソン主演の "サイロ" が高評価で人気があるみたい。ヒュー・ハウイーのベストセラーSF小説が原作で、翻訳も出ている。
6/9に配信開始のトム・ホランドが多重人格者を演じる「クラウデッド・ルーム」はダニエル・キイスの「24人のビリー・ミリガン」が原作。
D・キースは昔、学生時代に「アルジャーノン~」と「5番目のサリー」を読んだけど、「ビリー・ミリガン」は読んでなかった。うちの娘はT・ホランド好きなのでこのドラマを楽しみにしてる。(娘はApple musicの学生プランに加入していて、その特典でApple TV+も見られるのよ。私も娘のアカウントで見ている。)
最近の小説の映像化
Recent Book-to-Screen Adaptations - Goodreads
そういえば今月初めにハリウッドの脚本家組合がストを始めたというニュースがあったけど、あれはまだ続いているみたいね。これだけ長期間にわたると製作予定の映画やドラマに相当な影響が出るわよね。ネット配信で手軽に色んな映画が見れるようになったのは有難いけど、脚本家の人たちにとってはNetflixは諸悪の根源なのよね。
『ストレンジャー・シングス』も制作中断! エンタメ業界に激震を起こしている全米脚本家組合ストライキの理由とは? | GQ JAPAN