ヒーローがマフィアのボスという設定のロマサスで、このレーベルが一時期よく出していた類の作品だけど、これはダークさもHOTさも群を抜いている。
ヒーローは "天使の顔をした殺人者" と言われていて、超イケメンだけど冷酷さはハンパない。殺しは日常茶飯事で、銃で人を撃ちまくっているし、ナイフで顔を滅多切りにしたり、指を切り落としたり、さらには鉈で首を刎ねたり(ホラーか?!)していて、思わず怯んでしまうほどの極道ぶりだけど、こういうのは女性向けのロマサスだからと言って生ぬるくすると却ってつまらないので、これくらい容赦ないほうが面白い。
ヒロインの過去も悲惨で、何やら恐ろしげな組織に囚われて14歳で妊娠させられ、産んだ子供は取り上げられてしまう。それから10年たった今も、子供に危害を加えられたくなければ言う通りにしろと、おっかない男に脅迫されて、政治家や有力者の愛人になり彼らの情報を探るという娼婦まがいのことをさせられている。
壮絶な人生を送る2人が出会い、お互いに相手のことを、目が死んでる!自分と同じだ!と思って惹かれあうという稀有なロマンスで、絶望の淵にあるヒロインと、常に命を狙われ危険と隣合わせに生きているヒーローが恋に落ちるのだから、それはもう激しく燃え上がるわよね。凄惨なバイオレンスと濃厚なロマンスに釘付けになるドラマティックなストーリーが良かった。
The Sunday Timesが ”The latest queen of erotic literature" と評している作家で、官能描写が売りの作品にしてはサスペンスも意外としっかりしていて面白かった。(展開は割と見え見えだし、ロマサスなのでハッピーエンドだとわかっているけど。)鬱な設定でも心理描写はあまりくどくないのでそこまでの悲壮感はなく、アクションシーンも多いのでサクサク読める。ヒロインは自傷癖があるし、マフィアの殺戮は残酷だし、好みの分かれる作風ではあるけど、自分は鬱々としたモノローグが続くようなロマンスはあまり好きではないので、この作家の切れのあるストーリーが気に入った。最近シャノン・マッケナにはちょっと飽きていたので、新しい作家を読めて良かった。
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「愛の迷路にさまよって」という邦題は甘すぎると思う。どこの出版社もロマンス小説の邦題ってセンスないなぁと思うことが多い。この作品は、"愛は血を流す"とか"血まみれの愛"とかそういうイメージだなぁ。